文 : 鈴木玲子

鈴木玲子

鈴木玲子

すずきれいこ●65歳の関西在住主婦。学生運動に参加せず、学食でひとりボブ・ディランを弾き語った青春時代。大学では、フランス文学を専攻。卒業後、'70年の万博でのコンパニオンや海外生活を経て、現在は出来の悪い息子(ライター鈴木淳史)と出身地の芦屋で暮らす。労働後のライブハウス出没率高し。愚息イベント「SUZUDAMA~鈴木魂~」では、フランス語による前説を無理やり4年連続で披露させられている。Twitterは、@reikookanで呟き中。

Wed.27.Feb.2013

裏万博閑話

昔々、ある所に…、ある所とは大阪ですが。1970年3月15日、大阪万博は開催されました。あの年は今年同様、雪の多い年でした。オープン2、3日前の事、私達コンパニオンは会場見学をしていました。先進国館、日本企業館は準備万端整って、完璧に堂々とそびえていました。

この日も雪、しかも前日から降った雪が積もっていました。そんな中、冷たい地面に座りこんで何か作業をしている人がいます。漆黒の肌、彫りの深い美しい顔立ち。この寒空に着ているものといえば、コート無しの薄い民族衣装。エチオピアの人でした。ひたすら竹を細く長く裂き、組み合わせてドームの様なものを作っているようです。上から布でも張って、パビリオンの一部になるのでしょう。オープンが目前に迫っているというのに、まだ完成していないのです。口をギュッと結び、思い定めた眼差しで、この雪に耐えているのは、母国への誇りなのでしょう。万博から4年後、エチオピアでは革命が起こり、帝政が廃されました。その時、私はこのふたりのエチオピア青年を思い出していました。

華やかな万博とはいえ、陽のあたらない弱小国、みんな似たような状況でした。東南アジアの国々、ベトナムは既に南北で戦争をしていましたし、カンボジア、ラオスは会期中に革命が起こり、派遣されて来ていた政府代表や館長の交代があったりと気の毒な状態でした。

弱小パビリオンのコンパニオンは、大国館コンパニオンと違って、すべき仕事がたくさんありました。日本企業館を研修期間に辞め、カンボジア館に属していた私も、そのひとりです。経済的な理由で、コンパニオンが秘書的な仕事も通訳も広報、儀典も全てカバーするのです。大変ではありますが、特典もあります。例えば、「月の石」で大人気なアメリカ館。そんな超難関パビリオンにも、電話一本で入れてあげる事ができるのです。「我が館のVIPです。宜しくお願い致します」…、相手国の儀典課は特別入り口で出迎え、丁寧に案内までしてくれるのです。職権乱用ですが、母校のシスターなど色んな人に感謝されました。「牛後より鶏頭」は、中々良いものです。ソ連館、フランス館、どこでもOKでした。

会期中、あのエチオピア館も訪ねました。竹組みのテントの中で、特産品のコーヒーが販売されていて、特別おいしく感じられました。その後、カンボジア館の政府高官達は命からがらポルポト大虐殺からパリや日本に逃げたりと悲惨な状況になりました。当時の政府副代表が作った「アンコール・ワット」の模型は万博民族博物館にまだ展示されているはずです。複雑な気持ちになります。

若者にとっては、何か特別な意味があるらしい「太陽の塔」。私にとっては、高度成長に舞い上がった日本の「バベルの塔」に思えるのです。

ARCHIVES

  1. ▷ Mon.22.Sep.2014 「僕とテレキャノとロフト。」
  2. ▷ Tue.1.Apr.2014 「ABCラジオの時間。」
  3. ▷ Thu.9.Jan.2014 「たまたま埼玉」
  4. ▷ Wed.8.Jan.2014 「モテキ2014」
  5. ▷ Thu.12.Dec.2013 「冬の終わり~その時、ボクのハートは盗まれた~」
  6. ▷ Tue.3.Dec.2013 「少女A~中で学ぶ~」
  7. ▷ Mon.2.Dec.2013 「SUZUDAMA2013」
  8. ▷ Wed.16.Oct.2013 「Suzudama Times完成」
  9. ▷ Tue.15.Oct.2013 「一生忘れられない歌」
  10. ▷ Thu.15.Aug.2013 「サマージャム’13」
  11. ▷ Fri.9.Aug.2013 「デラシネ」
  12. ▷ Sun.4.Aug.2013 「8月8日は、『パプアニューグリラ祭』です♪」
  13. ▷ Mon.22.Jul.2013 「ほんまもんのレストラン」
  14. ▷ Thu.18.Jul.2013 「夏にして彼を想う」
  15. ▷ Wed.3.Jul.2013 「めひかりくるり」
  16. ▷ Fri.28.Jun.2013 「ギラギラ輝いていたヒマワリ…」
  17. ▷ Fri.21.Jun.2013 「オカンとピエールさんとマヤカン」
  18. ▷ Thu.13.Jun.2013 「50歳で出逢ったロックンロール」
  19. ▷ Thu.30.May.2013 「5月に捧ぐ」
  20. ▷ Wed.29.May.2013 「KING BROTHERSは不死鳥」
  21. ▷ Thu.16.May.2013 「雑誌広告のウワサの真相」
  22. ▷ Mon.13.May.2013 「日本語”プチ”研修中」
  23. ▷ Wed.1.May.2013 「レッドスニーカーズ×5月6日×シャングリラ」
  24. ▷ Fri.26.Apr.2013 「春の我が家の夕食」
  25. ▷ Fri.19.Apr.2013 「ほめてよ」
  26. ▷ Fri.12.Apr.2013 「離島に暮らす我が姪っ子」
  27. ▷ Sat.6.Apr.2013 「bloodthirsty buchers×KING BROTHERS」
  28. ▷ Fri.29.Mar.2013 「寅!寅!寅!」
  29. ▷ Thu.21.Mar.2013 「とりまきぐるぴ」
  30. ▷ Wed.20.Mar.2013 「太陽の塔」
  31. ▷ Fri.8.Mar.2013 「33」
  32. ▷ Mon.25.Feb.2013 「現場後記」
  33. ▷ Sat.16.Feb.2013 「タラモサラータ」
  34. ▷ Wed.13.Feb.2013 「ままぼく」
  35. ▷ Tue.5.Feb.2013 「ドナルド・キーン」
  36. ▷ Thu.24.Jan.2013 「いじめといじり」
  37. ▷ Thu.17.Jan.2013 「1月17日」
  38. ▷ Thu.10.Jan.2013 「古都からの若き刺客たち~2013年~」
  39. ▷ Thu.27.Dec.2012 「2012 BEST LIVE BAND」
  40. ▷ Thu.20.Dec.2012 「心のベスト10第一位は、こんな曲だった~2012年~」
  41. ▷ Wed.12.Dec.2012 「国境とパスポートと私」
  42. ▷ Wed.5.Dec.2012 「What’s Up, Woody Allen?」
  43. ▷ Wed.28.Nov.2012 「パリへの道中」
  44. ▷ Thu.22.Nov.2012 「後60分…」
  45. ▷ Wed.14.Nov.2012 「ハテナをミキサーにかけて」
  46. ▷ Fri.9.Nov.2012 「耳鼻咽喉科」
  47. ▷ Wed.31.Oct.2012 「”マヤカン”は遠くにありて思うもの」
  48. ▷ Wed.24.Oct.2012 「ライナー&ノーツ」
  49. ▷ Wed.17.Oct.2012 「2作目は機関銃を持って…」
  50. ▷ Wed.10.Oct.2012 「ラーメン!つけ麺!実母そうめん!」
  51. ▷ Wed.3.Oct.2012 「イライラをミキサーにかけて」
  52. ▷ Wed.26.Sep.2012 「そうだ!10月5日金曜日は、梅田クアトロの『SUZUDAMA’12~鈴木魂~ 新座長襲名公演』へ行こう!!」
  53. ▷ Wed.19.Sep.2012 「ランゲージとカルチャー」
  54. ▷ Sat.15.Sep.2012 「モテてんじゃねぇよ!モノ珍しがられてんだよ!」