文 : 鈴木玲子
Wed.17.Oct.2012
第1回、2回となんとかクリアーと思う間もなく、3回目になってしまいました。連載というのは気疲れするものですね。特に2回目は悲しかったんです。というのも、我が家の編集長がうるさくって。やれ「冗漫だ」、やれ「インパクトがない」等、数々のダメ出し…、へこみました。そんな時に思い出したのが、若い頃によく読んでいたフランソワーズ・サガン。
1953年、「悲しみよこんにちは」で華々しくデビューした18才。「第2作目は?」という記者の質問に「2作目が機関銃を持って、待たれてるのは知ってるわ」と言い放ったのです。なんと大胆不敵な少女でしょう。そして、2作目の「ある微笑」は、前作を上回廻る出来ばえ。私などは、主人公のリュックに憧れたものです。その後も出すもの、出すものヒット続き。読み耽りましたよ。また朝吹登水子氏の翻訳は、お洒落で小粋。アンニュイという言葉が、日本にお目見えしたのも、その訳のおかげでしょう。最近、芥川賞をとられた朝吹真理子さんは、親戚筋の方だそうですね。
こうして、2作目を軽々とクリアした代表がサガンなら、2作目が遺作となってしまった作家もいます。やはり、フランス人のレイモン・ラディゲ。ジャン・コクトーにも愛された作家です。生涯に2作しか、残せませんでした。20歳で夭折したのですから。その1作目は、「肉体の悪魔」といいます。出征兵士の妻と年下の少年の恋愛模様を描いた小説。勿論、不謹慎だと猛烈な非難顰蹙を買いました。でも、それをねじ伏せてしまう程の才能。「肉体の悪魔」は、大ヒット。さて、問題の2作目、遺作となる「ドルジェル伯の舞踏会」は、あの三島由紀夫、大岡昇平に「美徳のよろめき」、「武蔵野夫人」を書かせました。20才のラディゲによって、新たに「恋愛心理小説」というジャンルが確立しました。凄い2作目だったのですね。
栄光への2作目がサガンなら、死への2作目はラディゲでした。私ごときの2回目話から、フランス文学話になりました。これをどこに持って行きたいのか? お察しの通りです。この2人の綺羅星は、誰にも真似の出来ない「型破リヰナ」の生涯を送ったというのが「オチ」でした。