文 : 鈴木淳史

鈴木淳史

鈴木淳史

すずきあつし●36歳のライター。愉快なオカン(鈴木玲子(67))と芦屋で暮らす。「ミドリのアルバムライナーノーツを妄想で書け!」といったレコード会社の無茶ぶりにも、何とか対応できるタイプ。『 鈴木淳史の「ブログでも書いたら」と東京の偉い人に言われたので書いてみますブログ』執筆中。twitterも@suzudama14で登録中。2009年から、ライブイベント「SUZUDAMA~鈴木魂~」(5年目6回のイベント)も開催中。今春より、ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時『よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~』でパーソナリティー兼務構成作家を担当。

Thu.20.Dec.2012

心のベスト10第一位は、こんな曲だった~2012年~

年の瀬になると「今年の10枚」みたいな企画をされる方が多くなる。優柔不断な僕は、学生時代から絞り込めず苦手だった。仕事として依頼されたら必死に選ぶだろうが、追い込まれなきゃ全く出来ない。

先日、とあるバンドマンが砂肝の炒め物をつつきながら、ふと僕にこう言った。

「鈴木さん、去年の3月11日以降でグッときた曲はありますか?」
ひとつに絞る…、それも明確なテーマを提示されたら絞れる。

「アナログフィッシュの『抱きしめて』ですね」
僕は、そう答えた。

アナログフィッシュ「抱きしめて」は現時点で音源化されておらず、YouTubeでPVだけが公開されている。波が静かに押し寄せる砂浜の前で、メンバー3人がただただ佇むだけの映像。そして、優しく静かなメロディーが聞こえてくる。

危険があるから、事件が起きるから、遠いところへ静かな場所へ引っ越そうと歌われる。

畑と少しの家畜を飼って、人気のない場所で、二人で静かに生きていこうと歌われる。

「いつまで?」や「嫌だわ…」なんて言わないでと歌われる。

夏のライブで初めて聴いたとき、暗に3.11を匂わす歌詞に、このまま流れがひっくり返されなかったら、夢で終わるだけだと思った。ひっくり返して欲しい…、いや絶対にひっくり返されるんだろうなとドキドキしながら耳を傾けていた。

そして、見事にひっくり返される。

この世界に、どこにそんな場所があるのと問いかける…、もうここでいいから思いっきり抱きしめてと歌われる。

僕は、涙が止まらなかった。

何も具体的に声高に訴えないのに、強い気持ち強い愛が…、決意表明が…伝わってくる。

どこにいても、なにをしてでも世界は変わらないという諦観を持ちながらも、ここで生きる覚悟を感じる…、全く逃げていない…。

「もっと強く抱きしめて」という言葉が、いつまでも響く…。

アナログフィッシュの「抱きしめて」は、愛に満ち溢れた戦う男の歌だ。2012年の現在を、2013年以降の未来を描ききった歌だ。

2012年…、心のベスト10第一位は、こんな曲だった。
おあとがよろしいようで。

ARCHIVES

  1. ▷ Mon.22.Sep.2014 「僕とテレキャノとロフト。」
  2. ▷ Tue.1.Apr.2014 「ABCラジオの時間。」
  3. ▷ Thu.9.Jan.2014 「たまたま埼玉」
  4. ▷ Wed.8.Jan.2014 「モテキ2014」
  5. ▷ Thu.12.Dec.2013 「冬の終わり~その時、ボクのハートは盗まれた~」
  6. ▷ Tue.3.Dec.2013 「少女A~中で学ぶ~」
  7. ▷ Mon.2.Dec.2013 「SUZUDAMA2013」
  8. ▷ Wed.16.Oct.2013 「Suzudama Times完成」
  9. ▷ Tue.15.Oct.2013 「一生忘れられない歌」
  10. ▷ Thu.15.Aug.2013 「サマージャム’13」
  11. ▷ Fri.9.Aug.2013 「デラシネ」
  12. ▷ Sun.4.Aug.2013 「8月8日は、『パプアニューグリラ祭』です♪」
  13. ▷ Mon.22.Jul.2013 「ほんまもんのレストラン」
  14. ▷ Thu.18.Jul.2013 「夏にして彼を想う」
  15. ▷ Wed.3.Jul.2013 「めひかりくるり」
  16. ▷ Fri.28.Jun.2013 「ギラギラ輝いていたヒマワリ…」
  17. ▷ Fri.21.Jun.2013 「オカンとピエールさんとマヤカン」
  18. ▷ Thu.13.Jun.2013 「50歳で出逢ったロックンロール」
  19. ▷ Thu.30.May.2013 「5月に捧ぐ」
  20. ▷ Wed.29.May.2013 「KING BROTHERSは不死鳥」
  21. ▷ Thu.16.May.2013 「雑誌広告のウワサの真相」
  22. ▷ Mon.13.May.2013 「日本語”プチ”研修中」
  23. ▷ Wed.1.May.2013 「レッドスニーカーズ×5月6日×シャングリラ」
  24. ▷ Fri.26.Apr.2013 「春の我が家の夕食」
  25. ▷ Fri.19.Apr.2013 「ほめてよ」
  26. ▷ Fri.12.Apr.2013 「離島に暮らす我が姪っ子」
  27. ▷ Sat.6.Apr.2013 「bloodthirsty buchers×KING BROTHERS」
  28. ▷ Fri.29.Mar.2013 「寅!寅!寅!」
  29. ▷ Thu.21.Mar.2013 「とりまきぐるぴ」
  30. ▷ Wed.20.Mar.2013 「太陽の塔」
  31. ▷ Fri.8.Mar.2013 「33」
  32. ▷ Wed.27.Feb.2013 「裏万博閑話」
  33. ▷ Mon.25.Feb.2013 「現場後記」
  34. ▷ Sat.16.Feb.2013 「タラモサラータ」
  35. ▷ Wed.13.Feb.2013 「ままぼく」
  36. ▷ Tue.5.Feb.2013 「ドナルド・キーン」
  37. ▷ Thu.24.Jan.2013 「いじめといじり」
  38. ▷ Thu.17.Jan.2013 「1月17日」
  39. ▷ Thu.10.Jan.2013 「古都からの若き刺客たち~2013年~」
  40. ▷ Thu.27.Dec.2012 「2012 BEST LIVE BAND」
  41. ▷ Wed.12.Dec.2012 「国境とパスポートと私」
  42. ▷ Wed.5.Dec.2012 「What’s Up, Woody Allen?」
  43. ▷ Wed.28.Nov.2012 「パリへの道中」
  44. ▷ Thu.22.Nov.2012 「後60分…」
  45. ▷ Wed.14.Nov.2012 「ハテナをミキサーにかけて」
  46. ▷ Fri.9.Nov.2012 「耳鼻咽喉科」
  47. ▷ Wed.31.Oct.2012 「”マヤカン”は遠くにありて思うもの」
  48. ▷ Wed.24.Oct.2012 「ライナー&ノーツ」
  49. ▷ Wed.17.Oct.2012 「2作目は機関銃を持って…」
  50. ▷ Wed.10.Oct.2012 「ラーメン!つけ麺!実母そうめん!」
  51. ▷ Wed.3.Oct.2012 「イライラをミキサーにかけて」
  52. ▷ Wed.26.Sep.2012 「そうだ!10月5日金曜日は、梅田クアトロの『SUZUDAMA’12~鈴木魂~ 新座長襲名公演』へ行こう!!」
  53. ▷ Wed.19.Sep.2012 「ランゲージとカルチャー」
  54. ▷ Sat.15.Sep.2012 「モテてんじゃねぇよ!モノ珍しがられてんだよ!」