文 : 鈴木淳史

鈴木淳史

鈴木淳史

すずきあつし●36歳のライター。愉快なオカン(鈴木玲子(67))と芦屋で暮らす。「ミドリのアルバムライナーノーツを妄想で書け!」といったレコード会社の無茶ぶりにも、何とか対応できるタイプ。『 鈴木淳史の「ブログでも書いたら」と東京の偉い人に言われたので書いてみますブログ』執筆中。twitterも@suzudama14で登録中。2009年から、ライブイベント「SUZUDAMA~鈴木魂~」(5年目6回のイベント)も開催中。今春より、ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時『よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~』でパーソナリティー兼務構成作家を担当。

Tue.3.Dec.2013

少女A~中で学ぶ~

冷たい空気、乾いた空、寒い冬…、別に何も詩人ぶりたいわけでなく。

そんな冬の季節に地元の街をぼんやりと歩いていると、ふと想い出す光景がある。

時計の針を少しばかり戻して…、1991年、それは僕が中学2年生の時の話。

今や180㎝という図体の僕だが、当時は異様にちびっ子で確か140㎝弱だったはず。

子供の世界でも圧倒的に子供な存在。

中途半端にいじめられながら、中途半端に目立つという…、自身も自分の見せ方をあんまりわかってなかったものだから、学友たちにとっても、よくわからない存在だったはず。

僕の話はどうでもよくて、今日はある少女の話をしたい。

中森明菜的に言うなれば、少女A…、まぁ、この少女Aは中々の曲者だった。

すれたチャーミング、ヤンキーの匂いがしない事も無いが、そこまでヤンキーでもない。

どこか、ふてぶてしさがある。

今から思えば、かとうれいこに似てたのかも。

さて、どう曲者かというと、単刀直入にいうと、すぐ彼氏を作っちゃう。

狭い街の狭い学校の狭い学年で、どんどん男の子を渡り歩いちゃう。

また、それを学年全員が知っている。

もしかしたら、学校全体が知っていたのかもしれない。
 
何となく目立つ男の子は根こそぎ持っていかれ、「もう、そこまでいっちゃう!」みたいな男の子まで渡り歩いた時は、幼心ながらも流石に「何でもエエんかい!」と想ったのを薄っすら覚えているような気がする。

1991年の冬の季節、少女Aは忽然と学校から姿を消した。

「おばあちゃん家に行っているらしいよ」なんて話が聞こえてきたが、すぐに「どうやら誰かの赤ちゃんを身ごもって、中絶らしいよ…」なんていう噂話も飛び交う。

「相手はB君だよね??」なんて誰もが勝手な共通認識も持つ。

ただ、誰も何の確証もなく、時間はふわりふわりと過ぎ去った。

ここで時計の針を今にぐいっと戻そう。

今年の秋、オカン玲子と久しぶりにゆっくり喋る機会があった時に話は何故か中学時代に。

「何か中2くらいの時に●●●●●(少女A)が突然学校を休んだやん。色々、噂飛び交ったよな」

「んん?? あんた知らなかったっけ?? PTAの緊急会議が開かれるくらい大問題になって、校長が必死に揉み消そうとして凄くダサかったんだから」

「えっ!? そんな問題に?? 相手がB君のやつでしょ??」

「本当に何も知らないのね。C君だったのよ」

こんな会話を交わしたのだが、本当に何も知らなかった。

C君は小学校からの友人で家も近所だったが、今の今まで全く何も知らなかった。

時計の針をまた戻そう…、少女Aは何事も無かったかのように1992年の年明けには戻ってきていたはずだ。

何のてらいもなく、何の恥じらいもなく、忽然と姿を消す前と何の変わりもなかった。

いつもどおり、ふてぶてしかったのは確かだ。

中学3年になった春ごろには、同じ街にあるお坊ちゃんが行く有名私立の中学生と付き合っていた。

これまた、僕が小学校の時、同じ塾だった仲良しの友達だったものから驚いたものだ。

「こいつ、何を考えているんだろう??」と思わず地元の橋の上で、嬉しそうに私立中学の男の子と手をつなぐ姿を見て、呟いてしまったのだけは、はっきりと覚えている。

別に否定はしないが、明らかに自分とは違う人種だと感じたのであろう。

大人になってから、色んな人から中学時代の都市伝説を聞くのが、何かと好きである。

とある地方にある風俗店は、店長である男が中学時代に付き合っていた女の子全員を風俗嬢として働かしている。

とある地方の中学には、野球部全員と関係を持った女の子マネージャーがいる。

とある地方の中学には、同時に3人の男の子と付き合っていた女の子がいる、つまり三股。

どこまで本当かはわからないし、真相なんかはどうでも良くて、ただ中学という時期は何かしら性に目覚める時期だって事は明らかなわけで。

「モテキ」でお馴染み大根仁監督の新作「恋の渦」を観て想ったのだが、僕が大根さんの作品を好きなのは、男女の恋愛関係において圧倒的に女の子がずる賢いところ。

そして、どうしようもなく厄介にピュアな男の子は、そんな女の子のずる賢さに振り回されてしまう。

映画「モテキ」に出てくる長澤まさみ嬢演じるみゆきは稀代の文系悪女だし、ドラマ「モテキ」では高校時代から誰とでも関係を持っちゃう桜子先輩なんていう困った女の子もいた。

「恋の渦」に出てくる20代の女の子たちも静かにだが相当狂っている…、でも本人たちにはそんな意識はないだろう。
 
少女Aも各地方の都市伝説に登場する女の子たちも自分が狂っているなんていう自覚はないだろうし、彼女たちは彼女たちで自分の人生をリアルに生きているだけ。

大根監督は、そんな女の子たちのあけすけ感を取り上げていて、僕はそこに堪らない面白みを感じる。

今回、この文章を書こうと想ったのも、そんなあけすけ感に触れてみたかったから。

そして自分のあけすけ原体験を想い出そうとした時に、少女Aが出てきたのかも知れない。

中学3年間で少女Aと交わした会話は、ほとんど覚えていない。

そりゃそうだろ、彼女からしたら僕は対象の男の子ではなかったのだから。

中学2年や3年になると少女Aのような特殊な女の子じゃなくても、可愛らしい女の子たちは次々とサッカー部とかのかっこ良さそうに見える男の子たちと付き合い始める。

帰宅時に手を繋ぎながら校門を歩いている姿を、140㎝弱で何もやる事のない僕は校門の陰から指をくわえて見ていた。
 

僕も今や35歳、それなりに頑張って生きてきたと、それなりに胸も張ってみたりする。

少女Aたちは今、何をしているのだろう。

昔よりは立派な男の子として少女Aたちに見てもらえるのだろうか…、僕は同等に少女Aたちと話せるのだろうか…。

何か未だにどきどきしてしまい、何も話せないような気がする。

情けないけど、僕は中学のままの厄介なくらいに純な僕で止まっている気がする。

それを良いと捉えるか、悪いと捉えるか…、まぁ、また、ゆっくり考えますか。

とにかく女の子の中で学ぶ日々は、永遠に続くのだろう。

時計の針を戻すタイムスリップなセンチメンタル冬の旅は、これにて終わり。

何かよくわからないけど、おあとがよろしいようで。

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