文 : 鈴木淳史
Thu.12.Dec.2013
前回の「少女A~中で学ぶ~」は、私小説ならぬ私コラムとして個人的に綴りたい全てが詰まっていたというか…、ダブルミーニングならぬトリプルなのかフォースなのか意味合いも込められていたし…、当分この方向性で、これを超えるコラムは書けないと想うわけで……って、気持ち悪い自画自賛は、この辺りで置いといてと。
そんな中、オカン玲子(66)から突如、感想のメールが届いた。
「読みましたよ。はるか遠い昔の話、セピア色の写真」
中々、シャレオツな一言だが、その後、電話でも喋る事に。玲子いわく、「単なる想い出話になってなくて、色んな意味合いが込められているから良かったわよ」と、まぁ、ここで書ききれないくらいに細かく分析をしてくれた。
てなわけで、今回は逆に単なる想い出話を書いてみようじゃないかという事で、前回と同じく1992年時の話でも。もちろん、時計の針は戻される。
中学3年生秋、それも11月、高校受験前というのに、僕は離れの部屋で勉強もせず、あるドラマを観ていた。テレビを観ているとオカンにバレないように、クッションでテレビの光を遮りながら。
ボクたちのドラマシリーズ「その時、ハートは盗まれた」。
木曜夜8時に、その年の10月から10代の少年少女をターゲットに新設されたドラマ枠。第1弾は、観月ありさと当時ほぼ無名のいしだ壱成。そして第2弾なわけだが、第1弾同様フレッシュな面子。一色紗英が満を持しての主役に、今後超期待の若手枠に木村拓哉、そしてデビュー作になった内田有紀。
一色さんは初々しいし、木村さんは眩しいくらいにかっこいいし、内田さんは情報が無さ過ぎて何とも言えないくらいにミステリアスだった。つまり、これはどういうことか…、我々当時10代の少年少女は見事フジテレビの戦略に引っかかり、虜になってしまった。とどのつまり、ボクたちのドラマシリーズ「その時、ハートは盗まれた」がボクらの憧れるロールタイプになったわけだ。
身長140cmに満たない阪神地域の少年は東京の高校生活に憧れまくった…、実際のロケ地は埼玉だったわけだが…、まぁ、とにかく高校に入学すれば、こんな生活が待っていると信じ込んでいた。もちろん、そんな日々は訪れなかったが…。
見事に人気枠となり第1シーズンは4作、第2シーズンも4作と続いた。派生作品として「17才-at seventeen-」という内田さん、一色さん(主役が遂に内田さんに…)、そして人気絶頂の武田真治に、今や問題議員の山本太郎先生に、一瞬で引退も一生の記憶をボクに残したシューベルト綾(名前からして只者じゃない)などを動員して、trf主題歌という万全の枠であったが、そんなに伸びず、このシリーズ関連は消えていった…。
改めて考えると、ピースフルな雰囲気が漂う自由な作風が、90年代というのどか過ぎる時代にマッチしたのであろう。今の時代では、誠に能天気すぎるのかも知れない。だって、もっと今の時代は殺伐としているから…。とにかく、ボクらは花の高校生活に憧れた。
あの時、10代最少年齢である10歳だった少年少女も31歳になっているはず…。あのドラマに魅了された少年少女らは、どんな高校生活を…どんな青春を過ごしたのだろうか…。ブラウン管に描かれていた輝き眩しさを体験できたのだろうか…。そして、今どのように過ごしているのだろうか…。
35歳になっても未だにボクは、あのドラマの世界に憧れている。あの輝き、あの眩しさに恋焦がれている。久しぶりに毒にも薬にもならない想い出話を書き綴ったものだが、それでいいんじゃないの。自分の引き出しにしまったままで、その想い出を埃だらけにしている元少年少女もたくさんいるだろうしね。ねぇ、そんな皆さん、ボクたちのドラマシリーズ「その時、ハートは盗まれた」を21年ぶりに想い出してみたら、いかがですか。たまには懐かしさに浸ろうよ。
冬の終わり、またもや、くだらないほどセンチメンタルなタイムスリップをしてみた。本当に…おあとがよろしくないようで。