文 : 鈴木淳史

鈴木淳史

鈴木淳史

すずきあつし●36歳のライター。愉快なオカン(鈴木玲子(67))と芦屋で暮らす。「ミドリのアルバムライナーノーツを妄想で書け!」といったレコード会社の無茶ぶりにも、何とか対応できるタイプ。『 鈴木淳史の「ブログでも書いたら」と東京の偉い人に言われたので書いてみますブログ』執筆中。twitterも@suzudama14で登録中。2009年から、ライブイベント「SUZUDAMA~鈴木魂~」(5年目6回のイベント)も開催中。今春より、ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時『よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~』でパーソナリティー兼務構成作家を担当。

Thu.30.May.2013

5月に捧ぐ

bloodthirsty butchers吉村秀樹氏の逝去に哀悼の意を表します。

4月6日、僕は「bloodthirsty butchers×KING BROTHERS」という題で、この「型破リヰナ」に文章を書いていました。

2月に渋谷で少年ナイフとの対バン、3月にKING BROTHERSとの対バン…、今年二度も凄みある祭で、凄みある演奏を聴けて、心から良かったなと想っております。

中島らも氏の追悼イベントで、憧れの人にも関わらず生前逢う事が叶わなかったモブノリオ氏が「らもさんが教えてくれた事は…、好きな人には生きている内に逢いなさいという事です」と話しました。

約10年前の話ですが、未だに心に残っている言葉です。

今回も多くの人がネットで嘆いていますが、そういう意味では僕は今年二度もライブを堪能できて全くの後悔はありません。

本当に好きな人ならば、生きている内にたくさん逢わなければ…。

ほんの5日程前発表されたKINGからの脱退劇も多くの人がネットで驚いていましたが、世の中何があるかわかりません…、驚いた人は是非とも7月までに4人のKINGでのライブを…、その目に焼き付けてください…、もちろん目の前で観てください。

4月6日に掲載した「bloodthirsty butchers×KING BROTHERS」を、改めて掲載させて頂きたいと思います。

以下、どうぞお読みください。

吉村さんの御冥福を心からお祈り申し上げます。

鈴木淳史

「bloodthirsty butchers×KING BROTHERS」

先日、京都MOJOで催されたbloodthirsty butchers×KING BROTHERSによるイベント「エレキ大浴場~血に飢えたツーマンシリーズ~」を観戦してきた。

以前から、bloodthirsty butchers(以下、ブッチャーズ)とKING BROTHERS(以下、キング)に同じ匂いを感じていた身としては、興味深すぎる一戦。その同じ匂いは何かと問われれば、それは孤高の凄みと答えるであろう。共に何にも群れないし、何にも胡麻を摺らないし、何にも媚も売らない。共に決してわかりやすいセールスや動員があるバンドではないが、海外からの評価も高く、日本では互いに同世代のバンドからも一目置かれている。そして、後輩からも慕われている。ブッチャーズに関しては、2010年発表のドキュメント映画「kocorono」を観て頂くのが一番早いのではないだろうか。

さて、約ひとまわりの年齢が違う両者。当日、MCでキングのマーヤ君は「今日は一緒にブッチャーズをちょっと弱らせようぜ! 手強い! 手強い! ブッチャーズカッコいいやんけーー!!」と叫び、しきりに「しぶとい」という言葉で先輩のブッチャーズに敬意を表していた。その発言に対し、ブッチャーズの吉村氏もMCで「しぶといよ…。決して、しぶとい…直訳したら…なめんな!」と返す。が、吉村氏はキングとは古い付き合いであるという事、そしてキングが4人編成になってから如何に素晴らしいかや、自身の東京でのイベントにキングを呼びたいと想っていたので、今日は逢えて嬉しいなど…、非常に後輩のキングを認めた発言も繰り返していた。やはり、同じ匂いがするのか…。

特に印象的だった吉村氏のMCは、これだった。

「このポジションは誰にも譲らない。まだまだ、やるさ」

僕は以前から、キングは、このままだと良くも悪くもブッチャーズのようなポジションになるのではと想っていた。なぜ、”悪くも”かというと、そのポジションには揺ぎ無いブッチャーズがいるからだ。だからこそ、上記の発言には異様に驚いたし、痺れた。ブッチャーズは何にも満足していないし、まだまだ誰もが成し遂げていない事を果敢に挑戦しようとしている。そして、この日のブッチャーズは圧倒的だった。少し強めの言葉で言うなら、圧勝だった。戦の後に知ったのだが、実は戦前日にキングは公式Twitterで、こう呟いている。

「明日、恐れ多きながら立ち向かわせて頂きます‼  勝ち戦しかしないようなバンドじゃねえ!!!!」

はっきり言ってキングにとっては負け戦であった一戦だが、こんな熱い想いを持って、覚悟を決めてブッチャーズに挑んでいたのだ。胸が熱くなってしまった。キングは決して弱いから負けたんじゃない…、強いからこそ負けたんだ。こんなに価値のある負け戦はない。

ブッチャーズの背中を見て、キングも自分たちにしかない道を極めていく決意をしたであろう。ブッチャーズも、キングの強さを認めているからこそ、完膚なきまでに叩きのめしたのだ。改めて、孤高のバンド同士の凄みある関係性に惚れ惚れとしてしまった。本当に素晴らしすぎる一戦…。

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  53. ▷ Wed.19.Sep.2012 「ランゲージとカルチャー」
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