文 : 鈴木淳史
Sat.6.Apr.2013
先日、京都MOJOで催されたbloodthirsty buchers×KING BROTHERSによるイベント「エレキ大浴場~血に飢えたツーマンシリーズ~」を観戦してきた。
以前から、bloodthirsty buchers(以下、ブッチャーズ)とKING BROTHERS(以下、キング)に同じ匂いを感じていた身としては、興味深すぎる一戦。その同じ匂いは何かと問われれば、それは孤高の凄みと答えるであろう。共に何にも群れないし、何にも胡麻を摺らないし、何にも媚も売らない。共に決してわかりやすいセールスや動員があるバンドではないが、海外からの評価も高く、日本では互いに同世代のバンドからも一目置かれている。そして、後輩からも慕われている。ブッチャーズに関しては、2010年発表のドキュメント映画「kocorono」を観て頂くのが一番早いのではないだろうか。
さて、約ひとまわりの年齢が違う両者。当日、MCでキングのマーヤ君は「今日は一緒にブッチャーズをちょっと弱らせようぜ! 手強い! 手強い! ブッチャーズカッコいいやんけーー!!」と叫び、しきりに「しぶとい」という言葉で先輩のブッチャーズに敬意を表していた。その発言に対し、ブッチャーズの吉村氏もMCで「しぶといよ…、決して、しぶとい。直訳したら、なめんな!」と返す。が、吉村氏はキングとは古い付き合いであるという事、そして4人編成になってからの素晴らしさや、自身の東京でのイベントに呼びたいと思っていたので、今日は逢えて嬉しいなど…、非常に後輩のキングを認めた発言も繰り返していた。やはり、同じ匂いがするのか。
特に印象的だった吉村氏のMCは、これだった。
「このポジションは誰にも譲らない。まだまだ、やるさ」
僕は以前から、キングは、このままだと良くも悪くもブッチャーズのようなポジションになるのではと想っていた。なぜ、”悪くも”かというと、そのポジションには揺ぎ無いブッチャーズがいるからだ。だからこそ、上記の発言には異様に驚いたし、痺れた。ブッチャーズは何にも満足していないし、まだまだ誰もが成し遂げていない事を果敢に挑戦しようとしている。そして、この日のブッチャーズは圧倒的だった。少し強めの言葉で言うなら、圧勝だった。戦の後に知ったのだが、実は戦前日にキングは公式Twitterで、こう呟いている。
「明日、恐れ多きながら立ち向かわせて頂きます‼ 勝ち戦しかしないようなバンドじゃねえ!!!!」
はっきりと言ってキングにとっては負け戦であった一戦だが、こんな熱い想いを持って、覚悟を決めてブッチャーズに挑んでいたのだ。胸が熱くなってしまった。キングは決して弱いから負けたんじゃない…、強いからこそ負けたんだ。こんなに価値のある負け戦はない。ブッチャーズの背中を見て、キングも自分たちにしかない道を極めていく決意をしたであろう。ブッチャーズも、キングの強さを認めているからこそ、完膚なきまでに叩きのめしたのだ。改めて、孤高のバンド同士の凄みある関係性に惚れ惚れとしてしまった。本当に素晴らしすぎる一戦…。
この戦を体感して、想いだした相撲の対戦がある。約25年前の千代の富士対寺尾。凄みある二戦の流れをまとめた映像…、最後に観て頂きたい。おあとがよろしいようで。