文 : 鈴木淳史

鈴木淳史

鈴木淳史

すずきあつし●36歳のライター。愉快なオカン(鈴木玲子(67))と芦屋で暮らす。「ミドリのアルバムライナーノーツを妄想で書け!」といったレコード会社の無茶ぶりにも、何とか対応できるタイプ。『 鈴木淳史の「ブログでも書いたら」と東京の偉い人に言われたので書いてみますブログ』執筆中。twitterも@suzudama14で登録中。2009年から、ライブイベント「SUZUDAMA~鈴木魂~」(5年目6回のイベント)も開催中。今春より、ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時『よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~』でパーソナリティー兼務構成作家を担当。

Thu.16.May.2013

雑誌広告のウワサの真相

 昔、ネットで音楽雑誌の広告料金と記事のカラクリ疑惑について色々と騒がれていた事がありました。雑誌関係者が慌てて中途半端な偽善的言葉を、正義ぶって主張していましたね。「話せばわかる!」みたいなノリで…。論点をズラして疑惑から逃げているだけで、誠に情けない印象しか受けなかったのを憶えています。一度blogでも書いていますが、少し時間が経った今、改めて雑誌に携わる者として何かしら書きたいと想います、誰にでも理解できる言葉で。

まず、今から思えば、僕が幸運だったなと想うのは大学卒業後にカルチャー専門誌でなく、大手大衆情報誌、それも、関西版の仕事に就いたという事。働き始めた週刊ザテレビジョン関西版や兄弟紙である関西ウォーカーは大手出版社から発行される大衆情報なので、ある程度多くの方が読まれるわけです。つまり、情報がコアじゃないので、多くの方…要は一般国民の方へ伝わりやすい。そこと比べると、カルチャー専門誌は、掲載情報ジャンルの焦点を絞っているので、読者層を選んでしまう事になる。さて、何が言いたいかとなるので、次々と書いていきます。

物事を何か立ち上げたり、続けていく場合、資本が必要になります。販売価格収入だけでなく、必要な場合は、スポンサーが必要となる。
例えば、民放テレビ局がCM宣伝を入れるのは、そういう事ですよね。スポンサー=応援団。雑誌も、「この雑誌を応援したい!」という気持ちであったり、「この雑誌は伝わる力があるから、宣伝の場として使いたい!」などという気持ちから、テレビで言うところのCM宣伝…、すなわち「雑誌広告を出稿しよう!!」と想う会社が出てくる。CMや広告は、定められた料金を納めればよい。ただ、これはあくまで自由な事。

例えば、いわゆるCMや広告以上、テレビなら15秒でなく普通の長い放送時間、雑誌なら1ページや見開き2ページでなく、普通の長い記事欲しいとなると…、また意味が違ってくる。それは単なるCMや広告でなく、宣伝番組や宣伝記事へと変貌する。あからさまに、そう判断できるモノであれば、何の問題もない。ところが、雑誌でいうと普通の記事に見せかけているものの、実は、お金で買い取られて作成された記事だった場合、話が違ってくる。

要は雑誌の純粋な想いとして、演者を応援したいから、掘り下げるページを作成するわけです。それを喜んだ演者側が、感謝して好意として広告を出すのは自然で何も悪くない。もし雑誌側が、「ロングページで取り上げて欲しかったり、表紙にして欲しいのなら、お幾ら万円必要です!!」なんていう話を前提で演者側に交渉をしたら…。それも…「純粋に応援しているページです!」という様に偽装ページとして読者に提示したら…。もし演者側が、「ロングページで取り上げて欲しいし、表紙にして欲しいので、お幾ら万円を用意します!!」なんていう話を前提で雑誌側に交渉をしたら…。

大衆情報と違い、カルチャー情報の場合は、その作品性の評価を小難しくインテリぶったりして、ジャーナリズムのように世の中へ提示するわけです。雑誌によっては、はっきりと自らを評論家と言ったりもする。よしんば、そのような雑誌がお金によってページを動かしているとなると…、とんでもない事ですよ…。広告記事や宣伝記事は何も悪くないが、自分たちの純粋な感情で推しているように見せかけといて、実は全部お金で決まっている…、それが大問題なのです。

先ほども書きましたが僕が幸運だったのは、ある程度裕福な大手出版社の大衆情報誌におけるカルチャーページを…、それも東京という喧騒から離れた地方都市の関西で担当した事。だから広告料金を取らず、純粋に自分が良いと想える演者さんの記事を作り続けられた。なので、「宣伝費がないのですが、インタビューをお願いできますか?」などと演者さん側に言われたり、宣伝費不要での掲載を驚かれたりすると…、こっちが驚いたものです。関西の媒体で基本活動する僕は、広告費を必要としない媒体で執筆できている。今まで関わってきた東京のカルチャー専門誌も、広告料金が絡んだ取材でも、取り上げたいものを取り上げる精神に基づいた現場ばかりでした。

某音楽雑誌では、とある2ページを細かくコマ割りにして、「1コマお幾ら万円」と提示した上で広告掲載を募っている。あの手法は本当にわかりやすいし、悪意を全く感じない。カルチャー専門誌は大衆情報誌と違い、読者を選ぶから部数も違ってくるし、より資金が必要なのもわかる。ただ、お金で魂を…精神を…売ってはいけない。

「アメトーーク!」で昔、放送された「芸人ルール」で「誰かのバーターで出演しているタレントは、画面に『この人は、●●のバーターで出演しています』とテロップを出そう!」なんていう最高なルール提案があった。その手法に乗っ取り、雑誌も心から純粋に推している演者ではなく、広告料金で作成されたインタビューページは、一筆したら添えたら良いと想う。「この●●さんインタビュー記事は、『1ページ=お幾ら万円』の本誌広告料金ルールにより、▼▼ページ=▲▲万円で●●さん側と合致して作成されたものです」と。

最後にひとつ書きたいのですが、この悪しき伝統を当たり前のように受け止めて、当たり前に交渉してきた一部の演者側の会社も悪いと想うのです。クオリティー云々を置いといて、わかりやすく売れそうな作品しか宣伝しない。そうすると受け取る雑誌などの媒体側も、その悪しき伝統に慣れてしまい、クオリティーの高い演者や作品にアンテナを張らなくなる。

テレビやラジオや雑誌などの媒体から「●●さんを取り上げたいんですけど」とお願いすると、演者側の会社から「●●より★★をお願いしたいんですけど」なんて返されてしまったなんていう話は本当によく耳にします。平気で表現にプライオリティー(順番)を演者側の会社が付けてしまう…。「★★だけでなく、●●もテメエの会社所属やで!!」と声を大にして言い返したくなる。
どこの会社も慈善事業ではないですから、商業にならず倒産してしまってはいけません。でも、本当に良い演者をしっかり薦めていく事をすれば、絶対に何か変わると想うんです。良い演者が、広告料金などといった宣伝費予算が無いというだけでメディアから黙殺されて、気が付くと表現活動を出来なくなってしまうのは、あまりにも残酷すぎる…。以上、サルでもわかる雑誌広告のお話でした。

おあとがよろしいようで。

ARCHIVES

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  9. ▷ Tue.15.Oct.2013 「一生忘れられない歌」
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  17. ▷ Fri.21.Jun.2013 「オカンとピエールさんとマヤカン」
  18. ▷ Thu.13.Jun.2013 「50歳で出逢ったロックンロール」
  19. ▷ Thu.30.May.2013 「5月に捧ぐ」
  20. ▷ Wed.29.May.2013 「KING BROTHERSは不死鳥」
  21. ▷ Mon.13.May.2013 「日本語”プチ”研修中」
  22. ▷ Wed.1.May.2013 「レッドスニーカーズ×5月6日×シャングリラ」
  23. ▷ Fri.26.Apr.2013 「春の我が家の夕食」
  24. ▷ Fri.19.Apr.2013 「ほめてよ」
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  37. ▷ Thu.17.Jan.2013 「1月17日」
  38. ▷ Thu.10.Jan.2013 「古都からの若き刺客たち~2013年~」
  39. ▷ Thu.27.Dec.2012 「2012 BEST LIVE BAND」
  40. ▷ Thu.20.Dec.2012 「心のベスト10第一位は、こんな曲だった~2012年~」
  41. ▷ Wed.12.Dec.2012 「国境とパスポートと私」
  42. ▷ Wed.5.Dec.2012 「What’s Up, Woody Allen?」
  43. ▷ Wed.28.Nov.2012 「パリへの道中」
  44. ▷ Thu.22.Nov.2012 「後60分…」
  45. ▷ Wed.14.Nov.2012 「ハテナをミキサーにかけて」
  46. ▷ Fri.9.Nov.2012 「耳鼻咽喉科」
  47. ▷ Wed.31.Oct.2012 「”マヤカン”は遠くにありて思うもの」
  48. ▷ Wed.24.Oct.2012 「ライナー&ノーツ」
  49. ▷ Wed.17.Oct.2012 「2作目は機関銃を持って…」
  50. ▷ Wed.10.Oct.2012 「ラーメン!つけ麺!実母そうめん!」
  51. ▷ Wed.3.Oct.2012 「イライラをミキサーにかけて」
  52. ▷ Wed.26.Sep.2012 「そうだ!10月5日金曜日は、梅田クアトロの『SUZUDAMA’12~鈴木魂~ 新座長襲名公演』へ行こう!!」
  53. ▷ Wed.19.Sep.2012 「ランゲージとカルチャー」
  54. ▷ Sat.15.Sep.2012 「モテてんじゃねぇよ!モノ珍しがられてんだよ!」