文 : 鈴木淳史
Thu.21.Mar.2013
落語家のちょいとしたドキュメントを観る。
頭角を現わしてきたお弟子さんが、大師匠との念願の落語会を開く。会場に早くから入り、準備に必死なお弟子さん。ピリピリしてる。そりゃ、そうだな。念願なんだもん。ところが数日前から大師匠体調悪く、開催が危ぶまれる。何とか開催にこぎつけたものの、どれくらい大師匠が落語をできるかわからない。だから、余計にピリピリしてる。
そんな中、ようやく大師匠楽屋入り。挨拶と打ち合わせと思いきや、ここでとんでもない障害が…。大師匠、最近は中々落語をやらないもんだから、ここぞとばかりに友達たちが集まる。これまた、そのジジイたちが常識はないわ、行儀が悪いわ、礼儀が正しくないわ、そして偉そうだわと酷い。堪ったもんじゃない。自分たちが大師匠と知り合いで楽屋にも来れる関係というのに酔ってるから、たちが悪い。お弟子さんが様子をうかがっているのに、一切空気を読まず、大師匠のケータリングに手を出しながら、だらだらだらだら喋っている。お弟子さんの存在に気が付いたと思いきや、何と駄目出しまでする始末…。
まぁね、大師匠も悪いっちゃ悪いんだけど、やっぱり演者というのは天然だし、何も考えずに友達に優しくしちゃいますから。お弟子さんは「こいつら、なんやねん!」と思っていても、大師匠の友達だから中々言えない。そんなのは、決して良い友達と言えないし、大師匠が、その友達のせいで損もしちゃう。残念ながら、大師匠の職場を荒らしている事に気が付かない、友達…。友達であれば、友達である大師匠の職場(現場)を理解してあげないとね。
まぁ、これはかなり高いレベルの世界の話だけど、どのジャンルでも、どのレベルでも、演者と友達の関係は存在するし、こういう光景はよく見られる。実際、僕も鈴木魂以前に催していたイベントで、楽屋を演者の友達に占拠された上、お金がない中、必死になって演者に用意した自慢の弁当を食われた苦い想い出もある。自分自身も楽屋や打ち上げに出入りする身だからこそ、演者に迷惑をかけない様に、損をさせさない様に、泥を塗らない様に、常に立ち振る舞いに気を付けていきたい。
かっこいい演者のファンはかっこいいファン、かっこいい演者のスタッフはかっこいいスタッフ、かっこいい演者の友達はかっこいい友達…、そう信じている。取り巻きと呼ばれる人たち、グルーピーと呼ばれる人たちは、いつもどこかで誰かを無意識に傷つけている。そして、もちろん気が付かない。悲しいけれど…。いつの日か、取り巻きやグルーピーに荒らされない、フラットで平穏な現場が当たり前になる事を心から願っているし、祈っている。
おあとがよろしくないようで。