文 : amazarashi 秋田ひろむ
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通常版
amazarashi
「あんたへ」
Thu.22.May.2014
やはり僕はミュージシャンなので、たまにはこのゲームコラムでもミュージシャンらしい事を書くべきなのではないかと思うのだ。そして、音楽好きにゲームの面白さを伝える事がゲームオタクミュージシャンとしての使命なのではないか。
なので、今回は音楽がかっこいいゲームトレーラー(いわゆる予告編)を紹介していきたい。「ゲームなんてピコピコやってる子供の遊びだろ」なんて思ってる人にこそ見てもらいたい。ゲームの楽しさの一片に触れられる、映像作品として単体で面白い、そんな動画の数々だ。
まずは「BioShock Infinite」のトレーラーから。テンション上がる事請け合いだ。
骨太なファズギターが爽快なこの曲は、ロサンゼルスの女性ボーカル3ピースバンドNico Vegaの”Beast”という。ドラムのビートとゲーム内のアクションシーンがリンクして非常に小気味いい。
「BioShock Infinite」自体はストーリーが哲学的でセンシティブな側面もあるのだが、こういう風にど派手なアクションシーンとマッチョイズムなサウンドで打ち出しているのも面白い。
『アメリカの栄華を象徴する存在として1900年代に築かれた空中都市コロンビア』という世界観と、アメリカ政府に対するフラストレーションを扇情的に歌う”Beast”のメッセージ性とのマッチングも見事なトレーラーだ。ほぼ全ての映像が実際のゲームプレイ画面だというのも好印象だ。
次は「Cyberpunk 2077」のトレーラー。
Archiveというバンドの”Bullets”という曲。エレクトロなサウンドと、文字通りサイバーパンクな世界観がリンクして胸が高鳴るトレーラーだ。
スローモーションで映像が進み、徐々に状況が明かされていく展開が素晴らしい。たった2分の映像で起承転結を成し遂げていて、映像作品単体として完成度が高い。
「Cyberpunk 2077」は「The Witcher」シリーズ等で有名なポーランドのゲームデベロッパーCD Projekt REDの新作RPG。まだ発売日も未定だが、このトレーラーを見る限り相当力を入れているはずだ。ストーリードリブンのオープンワールドとの事。原作がテーブルトークRPGらしいので、重厚な世界観も期待できる。とても待ち遠しい作品だ。
言わずとしれた名作RPG「Fallout3」打って変わってオールディーズのナンバーがフィーチャーされたトレーラーだ。
ドゥワップコーラスグループのThe Inkspotsが歌う“I Don’t Want To Set The World On Fire”が真空管ラジオから寂し気に流れ、ノスタルジーを感じさせる映像なのだが……。
「Cyberpunk 2077」と同じように情報が一個ずつ開示されていって、最後には意外な結末を迎えるという、映像作品のお手本のようなトレーラーだ。
“I Don’t Want To Set The World On Fire”は『僕は世界中に火をつけて名を上げたい訳じゃない、ただ君の心の炎を灯したいだけ』と歌い、1941年にヒットしたが、その背景にはアメリカの第二次世界大戦参戦が大きく影響したそうだ。「Fallout3」は核戦争後の荒廃した世界を舞台にしているので、何かしら暗示めいた意図を感じさせる。世界背景をさりげなく感じさせる見事な選曲だ。
もはや音楽とは関係ないのだが、多分最近のゲームトレイラーの中で一番有名な作品「Dead Island」。ゾンビゲームなので多少グロいが、素晴らしい映像なので是非見て欲しい。あ、子供は見ないで下さい。
まるで映画を見たあとのような重苦しい観了感が記憶に残る作品だ。
逆回転の映像で家族に起こった惨劇が明らかになっていくこのトレーラーは、いまいちマイナー感の抜けきれなかった「Dead Island」を一躍注目作品に伸し上げた。カンヌ国際広告祭のInternet Film部門で金賞を受賞した事でさらに箔をつけ、全世界で売り上げ500万本の大ヒットとなった。
そして様々なパロディーや、パクったような作品も沢山生まれた。最近話題になった山羊が主人公のバカゲー「Goat Simulator」の愛すべきパロディーも笑えた。
もうここまで来ると説明する気もないのだが、一時間大笑いするのに10ドルは惜しくないとあなたが思うんだったら購入をお勧めする。
後半は音楽関係なくなってしまったが、最近のゲームトレーラーは音楽にも凝っていて関心する事が多い。「Hotline miami」や「Transistor」などのトレーラー音楽も素晴らしかった。
ゲーム音楽というものは、しばらく独自の生態系を築いていたように思う。ゲームの音楽を専門に作る人が居て、その中で人気のある作家がその時々のゲーム音楽の流行を作っていた。もちろん素晴らしい作曲家は沢山いるし、悪い事ではないのだ。
だが最近になって、ゲーム音楽という独自の枠を飛び越え、今現在の音楽カルチャーとゲームカルチャーが地続きで繋がっている感じがするのだ。クールなゲームにはクールな音楽を、という当たり前の発想が物珍しく見えてしまうのも少し悲しいのだが。
つまり何が言いたいかっていうと、amazarashiもよろしくお願いします。