文 : amazarashi 秋田ひろむ

amazarashi

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amazarashiは秋田ひろむを中心としたバンド。
2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出のないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミになり、またたく間にリリースされた6枚のアルバム全てがロングセールスを続けている。

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  1. あんたへ

    初回限定盤
    [DVD・文庫本ブックレット付]


    あんたへ

    通常版

    amazarashi
    「あんたへ」

    2013/11/20 発売
    初回限定生産盤 ¥2,100 (TAX IN) CD+特典DVD+文庫本ブックレット
    通常盤 ¥1,800 (TAX IN)

    1. 1.まえがき
    2. 2.あんたへ
    3. 3.匿名希望
    4. 4.冷凍睡眠
    5. 5.ドブネズミ
    6. 6.終わりで始まり
    7. 7.あとがき

Thu.21.Mar.2013

乱数とは神様だ

 最近はもっぱらパソコンでゲームをする事が増え、海外ゲームダウンロード販売サイトの便利さも手伝い、購入欲がとどまる事を知らない。一番メジャーなのがSTEAMだと思うが、一番早くプラットフォームを広めたもの勝ち、という事だろうか。その他GamersGateやレトロゲーに特化したGOG.com等、便利さやセールの多さでもひけを取らないサイトは多いが、日本人向けにもユーザーライクなSTEAMが僕にとっては一歩抜きん出ている印象だ。
 今はまだダウンロード購入する人間自体がコアユーザーという事だろうが、日本ではこの手のサービスは浸透していない。コンソール向けのダウンロード購入サービスは存在するが、それがメインになる日は遠いようだ。
 だが、日本は日本でどんどん煮詰まってしまえばいい、というのが一ゲームファンの僕の意見だ。
JRPGという言葉が嘲笑的に使われるようになった昨今だが、どんどんガラパゴス化して世界的に見ても奇抜で独特な作品で圧倒して欲しい。D&DベースのWizardryからインスパイアを受けてドラクエが生まれたように、海外RPGが一人称視点を頑に貫く中、ドラクエやFFが日本独自のRPG文脈を築いていったように。そこにこそ邦ゲームの強みがあるのではないか、と僕は思う。

 現在はちょっと懐かしいゲーム「NeverWinter Nights」を遊んでいる。

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日本語版の発売は2006年。上でも書いたD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)というテーブトークRPGのルールを採用したPCゲームだ。このゲーム、テーブルトークRPGをPCで遊ぼうというコンセプトが強く、シナリオ作成ツールや、ネットを介してのテーブルトークセッション機能など、今現在となってもかなり個性的なゲームなのだが、シングルプレイRPGとしてもしっかり楽しめる。
 テーブルトークを意識してなのか、NPCがしゃべるテキストの量も膨大だし、プレイヤーが辿る選択肢も多岐にわたる。疫病に見舞われた街“ネヴァーウィンター”を救うところから始まり、世界の存続をかけた冒険に繰り出すわけだが、まるで海外のファンタジー小説を読んでいるようなプレイ感だ。そして、この手のRPGで僕が一番好きなのはダイス(サイコロ)の数値、乱数が可視化されているところだ。
 テーブルトークに限らず、コンピューターRPG全てにおいてプレイヤーの運命は乱数に支配されている。攻撃が命中するか、宝箱に仕掛けられた罠を解除できるか、発動した罠を回避できるか、宝箱のアイテムはレアなのか。全ては神のみぞ知る。つまりゲームにおいて乱数とは神様なのだ。
 それぞれのゲームにおいて様々な計算式が存在するが、プレイヤーは普段それを知る事なく一か八かの岐路に立ち向かうのだが、NeverWinter Nightsではその計算式が表示されるのだ。それを見せられると、「今立たされているピンチに勝ち目はあるのか、はたまた無いのか」と頭を巡らせる事になり、一瞬一瞬が手に汗握る選択の連続に変わるわけだ。

 似た様なゲームでは、大分昔だがスーパーファミコンの「ソードワールドSFC2」もダイスの数字が見えるゲームだった。これもテーブルトークRPG「ソードワールド」をベースとしたもので、当時としてもそのテーブルトーク的な冒険感は、僕をフォーセリアの世界へと何十時間も閉じ込めたのだった。

 最近でもそういうゲームはある。3DSの「クリムゾンシュラウド」だ。

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あの松野泰己氏のテーブルトークRPG風RPG。ゲーム進行はテキストアドベンチャー形式で進行し、あらゆる危機的な場面でタッチパネルを使ってダイスを振り、その結果がシナリオに影響する。特殊スキルや魔法は装備アイテムに付随する形で、戦闘もシナリオもJRPG的で分かりやすい。というか、松野氏自体がJRPGの文脈を作って来た日本を代表するクリエイターな訳だから、そういうシステムの分かりやすさ、入り込みやすさを我々ゲームファンに叩き込んだのが松野氏だ、と言った方が正しいかもしれない。とにかくテーブルトークというコアなコンセプトとは裏腹に、すんなり遊べる敷居の低さは素晴らしい。
 ただ、昨今のサクサクプレイ至上主義というか、モーションやエフェクトの美しさよりもスピード感を求められる最近のRPGとしては、いちいち攻撃の度にダイスを振らされ、足止めされるのは煩わしさを覚えるかもしれない。
 だが、それがいいのである。攻撃一つにも物語がある。それがダイスロールの妙だ。ダイス万歳。
 クリアまでは数時間と短いのだが、それもそのはず値段は800円のダウンロード専売。そもそも以前は「GUILD 01」という著名なゲームクリエイターの作品が4つまとめて収録された、いわゆるオムニバスの形式ソフトの中の一つのゲームだった。こういう試みはどんどんやって欲しい。制作費が高騰するゲーム業界において、新規シリーズを開拓するのは難しいが、こういう試行錯誤で新たなアイデアを模索してくれるのはファンとしても心強い。こうしてお気に入りのゲームにも出会えたわけだし。是非次はフルプライスの長編として「クリムゾンシュラウド」を発売して欲しい。それまでは、周回要素が豊富な今作を何週でも遊ぼうと思う。

 と、ここまで書いたのだが、こういうダイスを振るゲームばかりやっていると、実生活にも影響が出てくる。選択を迫られる場面になると、僕の頭の中でダイスが振られるのだ。FPSプレイヤーなら経験あるだろうが、ヘリが飛んで来たら身を隠そうとしたり、高台にスナイパーがいないか思わず目を凝らしたり、あれと一緒だ。
 僕の場合で言えば、ミュージシャンなのでやはり重大な選択と言えばライブやCDリリース。特に来月4月10日にはamazarashiのニューアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」のリリースが迫っているのだから、それこそ重要な選択を幾つも下さなくてはならない。まさに神のみぞ知る、だが、その度に頭の中でダイスが振られるのだ。
 さて、“クリティカル”とでるか“ファンブル”とでるか……。