文 : amazarashi 秋田ひろむ

amazarashi

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amazarashiは秋田ひろむを中心としたバンド。
2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出のないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミになり、またたく間にリリースされた6枚のアルバム全てがロングセールスを続けている。

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  1. あんたへ

    初回限定盤
    [DVD・文庫本ブックレット付]


    あんたへ

    通常版

    amazarashi
    「あんたへ」

    2013/11/20 発売
    初回限定生産盤 ¥2,100 (TAX IN) CD+特典DVD+文庫本ブックレット
    通常盤 ¥1,800 (TAX IN)

    1. 1.まえがき
    2. 2.あんたへ
    3. 3.匿名希望
    4. 4.冷凍睡眠
    5. 5.ドブネズミ
    6. 6.終わりで始まり
    7. 7.あとがき

Fri.8.Feb.2013

現実逃避

 冬も深まり、日本のスカイリム地方こと青森での暮らしは中々に厳しさを増している。朝夜と雪掻きに追われる毎日、それにおかまいなく翌日には窓まで覆う勢いで積もる雪、凍った道路と常に緊張感を伴う運転、僕はもう本当に辟易してしまうのだ。いっそ南の国にでも逃げ出せたら、といつも思うのだが、思いつきで南国旅行へ行けるほど僕にはお金も行動力もないのである。
 だが可能なのだ。ゲームでなら。

テストドライブ アンリミテッド2

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 2011年6月に発売されたドライブシミュレーションゲーム。このゲームの特徴は、実在するスペインのイビサ島を自由気ままにドライブする事が出来るというところだ。さらには前作の舞台であったハワイオアフ島もまるまる入っており、広大なオープンワールドをお気に入りの車に乗って気ままにドライブが出来る。
 このゲームの何より楽しい所はオンラインのマルチプレイだろう。シングルとマルチの境目もシームレスで煩わしさを感じさせない。まるでMMOと見まがうほどだ。一人で島に点在するミッションやレースをこなしている間にも他のプレイヤーとすれ違い、時にはパッシング一つで熱いレースが始まり、クラクション一つで島一周のツーリングが始まったりする。その気軽さ故にフレンド登録依頼が多く来るのもこのゲームの特徴だ。恐らくこのゲーム特有の広大で開放的でゆったりとした世界観が、プレイヤーをフレンドリーにさせているのだろう。マルチプレイは外国人が多い印象だが、時折聞こえてくるボイスチャットは大抵笑い声か鼻歌だし、単純なゲームなのでコミュニケーションに困る事はほとんどない。FPSの罵詈雑言飛び交うボイチャに疲れたゲーマー達にとっての、まさに“楽園”と呼ぶべきゲームなのかもしれない。
 一つだけ残念なところは、このゲーム、いい車を買ったりストーリーを進めるにはドライバーライセンスのランクを上げなければならないのだが、そのランクを上げる為のミッションが少々難しい。僕は普段レースゲームをやらないし、車もほとんど知らない。それでもこのゲームに惹かれたのは自由気ままにのんびりドライブが魅力的だからだ。おそらくそうしたところに魅力を感じたライトなドライバーが多いであろうこのゲームで、突然ガチのドライブテクを求められても……と、興ざめしてしまうのだ。それにしたって、一日30分を一年間続けられる良質な“現実逃避ゲー”であることに変わりはない。


FarCry3

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 南国の孤島を舞台にサバイバルと手に汗握るアドベンチャーが売りのFPS。公式ではファーストパーソンアドベンチャーと名乗っているようだ。12月に発売された海外PC版で遊んだのだが、これまた凄いゲームが出てきた。
 始めはTESシリーズやFallOutライクな一人称視点のRPGかと思っていたのだが、それ等とは違う。GTAミーツアンチャーテッドを一人称視点にしました的なアドベンチャーゲームと言った方が近いだろう。トロピカルな雰囲気溢れる島を、車、バギー、グライダーや徒歩で自由に探索、狩りをして素材をはぎ取り便利なアイテムを作ったり、とどこかで聞いたような要素が多いのだが、FarCry3が優れている点はそれ等を特別にする演出力だろう。動物から素材をはぎ取るのも血みどろで、SEも中々にえげつないが、そういう痛みを伴う演出力はストーリー部分でこそ意味を持ち始める。コンプレックスを抱えた普通の若者が狂気の一端に触れ、徐々に暴力に目覚めていく、というアウトライン自体がすでに面白そうだが、その他細かな見せ方もいちいち秀逸なのだ。

fc2

 スキルを取得するごとに左腕に増えていくタトゥーは主人公が強くなった証だが、強くなるごとに、やばい事になってる感が“目に見えて”増していく。良く出来た描写だ。さらに、さえない主人公は敵を殺す度に達成感を覚え、それで承認欲求を満たし始めるのだが、それはプレイヤー自身のミッションクリアの達成感ともリンクしはじめ「やばい、でも止められない」といった背徳感とも重なり更なる没入感を生み出す。
 ストーリーの端々に出てくるドラッギーでサイケな精神世界で、劣等感をはらんだ兄弟愛が垣間見えるのも面白い。アメリカの若者の飽食的な文化と対比して描かれる島に土着する宗教や犯罪組織、洞窟の奥にある古代遺跡とインディージョーンズの様な明快なアクションも、どれもがよく考えられていて、ストーリーにもゲームプレイにも緩やかに関わり合う。
 日本では3月7日、PS3版とXBOX360版が出るようだ。これは声を大にしてお勧めしたい。

 と、現実逃避を題材にここまで書いたので分かってもらえると思うが、僕にとってゲームとは現実逃避である。だが“現実逃避”という言葉はよくないのかもしれない、どこか非社会性をはらんだ言葉に聞こえる。ストレス発散、がぴったりくるだろうか。
 コンピューターゲームはリアルになり、成熟し、もはや子供だけが遊ぶおもちゃではなくなった。だが、それを知っているのはゲーマーだけだ。未だ子供のおもちゃという認識しかない大人がほとんどだし、それ故、犯罪への影響だなんだと的外れな議論の槍玉に挙げられる事も多い。だが、コンピューターゲームはもはや一大エンターテイメントだ。総合芸術だ。映画や小説と変わらない。いや、物語に介入できる分だけ映画や小説より優れてると言えるかもしれない。アメリカで銃規制問題に関連してFPSゲームがまた槍玉に挙げられたが、悲しい事だ。確かに露悪的なゲームも存在するが、問題は未成熟な子供がそれに触れる事であって、戦争ゲームの存在自体は責められるべきではない。戦争映画を誰も責めないように。
 一日の仕事を終え、忙殺される日々の息抜きとして、ビールを飲みながら現実からふと離れられる瞬間があったっていいじゃないか。ゲームとはきっとそういうものだ。