文 : amazarashi 秋田ひろむ

amazarashi

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amazarashiは秋田ひろむを中心としたバンド。
2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出のないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミになり、またたく間にリリースされた6枚のアルバム全てがロングセールスを続けている。

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  1. あんたへ

    初回限定盤
    [DVD・文庫本ブックレット付]


    あんたへ

    通常版

    amazarashi
    「あんたへ」

    2013/11/20 発売
    初回限定生産盤 ¥2,100 (TAX IN) CD+特典DVD+文庫本ブックレット
    通常盤 ¥1,800 (TAX IN)

    1. 1.まえがき
    2. 2.あんたへ
    3. 3.匿名希望
    4. 4.冷凍睡眠
    5. 5.ドブネズミ
    6. 6.終わりで始まり
    7. 7.あとがき

Fri.18.Oct.2013

Twitterに犯罪写真を投稿する大学生が主人公でもいいじゃないか

諸兄ほどのゲームオタク、いや、ハードコアゲーマーともなれば“積みゲー”の一つや二つ当然あるだろうが、僕も例に漏れず、今年に入ってから買ったもののクリアしていない“積みゲー”の山がすでに築かれつつある。
 もっぱら最近ではダウンロード購入が中心なので、昔の様にゲームの山に生活区域を圧迫される事はなくなったが、それが逆に無駄なゲームを購入してしまう口実になってしまい、負のスパイラルに落ち入っている。これは良くないと思いつつ止められないのがゲームオタク、いや、ハードコアゲーマーの性なのだ。

 とは言っても、発売日に購入して、食事も睡眠も忘れてぶっ続けでプレイして、一気にクリアしてしまうような神ゲーは確かに存在して、僕らはそのアドレナリンが垂れ流しになるような、あの興奮体験を求めて、今日もまたゲームを買ってしまうのだ。
 そして今月もまた一本、そんな神ゲーに出会えた。「グランドセフトオートⅤ」だ。

1

 米国Rockstar Gamesの言わずとしれた人気シリーズの最新作。物語の舞台はロサンゼルスをモデルとした架空の都市「ロスサントス」。広さ127平方キロメートルの広大な島で繰り広げられるクライムアクションゲームだ。その前評判通り、期待を遥かに越える傑作だった。

 主人公は三人となり、操作キャラクターを任意に切り替えながらストーリーは進む。
 マイケルは元銀行強盗の妻子持ち。富裕層で高級住宅街に住むが、家族と折り合いがつかずセラピーに通う中年。
 トレバーは田舎のトレーラーハウスに暮らす白人低所得者層。退役軍人で航空機の操作に長けているが、今や酒やドラックに溺れ、性格にも異常があるサイコパス。
 フランクリンはゲットー生まれゲットー育ちの黒人の若者。いつか成り上がるのを夢見ながら、カーディーラーの小間使いで車泥棒や詐欺で生計を立てている。
 この主人公三人のキャラクターが絶妙で、ひょんな事から三人が出会い、手を組むところから物語は加速していき、プレイの止め時が見つからなくなってしまう。

2

 そもそも物語という程の凝ったストーリーでもないのだが、キャラクター達の見せる皮肉の利いた会話や、突拍子もない行動が刺激的で楽しく、海外映画のオマージュの様な派手なアクションシーンや、時々リアリティーから離れすぎるお馬鹿な悪ふざけも相まって、どんどん主人公達を好きになっていく。この三人が最終的にどうなるのか、絶対見届けたいという気持ちさせられてしまった。

 だがこのゲームに関しては、こういう魅力的なメインストーリーでさえ、さほど重要ではない。その他のアクティビティーが膨大すぎるのだ。乗り物は車、バイク、自転車、バギー、セスナ、ジェット機、ヘリコプター、潜水艦と多種多様。スポーツもテニスやゴルフとそれぞれに独立したゲームとしての完成度がある。その他、ストリップ劇場、車の改造、着せ替え要素、インターネットでは数十分の動画が視聴でき、丸一日潰せる程のコンテンツがあり、株式売買、テレビや映画もかなりの完成度だ。
 こういう膨大な作り込みの中で、一番僕がはまったのは気ままなドライブだった。以前このコラムでも書いた「テストドライブアンリミテッド」の様な、“箱庭の中でのんびりドライブ”すらこのゲームは内包している。しかも、その美しい風景と世界のディテールは、過去のどんなゲームより優れている。
 あらゆるゲームの要素を野心的に取り込み、食い散らかしてやるという前傾姿勢すら感じられるこの作品は、間違いなくゲーム界のトップオブギャングだ。

3

 あまりに完璧なゲームだったため、僕は満足感と一緒に悔しさが込み上げるのだ。それは日本のゲームファンとして。
 なぜ日本は「グランドセフトオート」を作れなかったのか。

 もちろん資本力では勝てないのは分かっているし、そもそもアメリカのカルチャーの集大成であるからこその完成度であるのも分かっている。
 だが、若者のカルチャーや日本の社会問題を皮肉る事くらいのリアリティーは表現できるはずだ。
 マイケルの息子はニートでマリファナを吸いながらFPSゲーム、娘は有名人になりたい一心でポルノ撮影、人気のスター発掘番組での枕営業、サブカルヒップスターへの嘲笑、と壮大なアメリカあるあるの様なこのゲームが爆発的に売れるのは必然な気がする。
 ホストみたいなイケメンが自身の背丈より大きい剣を振り回すゲームも楽しいものだが、もう少し生活に根ざしたリアリティーがあってもいいじゃないか。
 カルチャーを取り込む事によって、若者のカルチャーとなった「グランドセフトオート」を見ているとそんな事を考えてしまう。
 
 Twitterに犯罪写真を投稿する大学生が主人公でもいいじゃないか。不倫をした芸能人や、ブラック企業につとめる自殺願望を抱えたサラリーマンが出てきてもいいじゃないか。ロックフェスを心待ちにするPerfumeファンの女子高生や、Youtubeに違法動画をアップするネットジャンキーが出てきてもいいじゃないか。真っ昼間から本業そっちのけでゲームコラムを書殴っているゲームオタクのミュージシャンが出てきてもいいじゃないか。