元気ですか?
私以外のみんなはとっても元気!
私は夏バテを騙し騙しやり過ごしてなんとかやっています。
活動再開してからと言うもの矢のように日々が過ぎ、気付けばもう来年のことを考えている日々です、が、少し振り返ってみようじゃないか、と思うのです。
再開直後から振り返ると、色々と膨大で書ききれないので、今回は「夏の自由研究」として東京キネマ倶楽部にて開催した八月八日、蜂月蜂日の研究結果をここに。
まずは演者のお写真から
この写真は先日行った神戸での単独公演の写真です。
みんな素敵に写っていますね。
この写真たちを是非みなさんに観てもらいたかったのです。だって、艶艶してるでしょう?
実際どんなに艶っぽい夜だったことか、この写真を見るだけで思い出します。
撮影者は神戸時代の私たちをよく撮りに来てくれていた、おはぎちゃん。
蜂月蜂日は「もし私が女王蜂を初めてなかったらどうなっていたか」と言うテーマを掲げてライヴを行いました。
学生時代、バンドと言う選択肢を取れたからよかったものの、もし選べていなかったら、、いま考えただけてゾッとしています。
でも、今回はゆっくりと掘り下げ、何故多感な時期に(いまの方が多感かもしれませんが)書いた曲たちを時系列に並べてみたり、あ!この歌詞はこれを言いたかったのか!なんて解釈したり、自分で自分を解剖して深みにはまっていくのはそれはそれは楽しかったです。
女王蜂 夏の自由研究 蜂月蜂日
にわか雨がしんしんと降る夏の夜
ビニール傘を差した女が一人、赤子を抱いて子守唄を歌っている
神社の階段を慎重に登る女
歳の頃は18、9あたりだろうか、周りに誰かいないかを気にしながら一歩、また一歩と階段を登る
濡れていない地面を探してそっと赤子を置くと、しきりに泣かないで、泣かないでねと繰り返す女
赤子はけして泣かない
泣くことはない
ビニール傘を赤子が濡れぬよう差した女は力なく一人、立ち上がる
赤子のほうへ時折振り向き、しかし離れてゆく女
ごめんね
女は押し殺した声でそう言うと、闇の中へと消えた
不気味な掛け声と共に、本編の楽曲がスタート
先程の不穏なムードを払拭するかのように熱を帯び、進んでゆく
先程の女と赤子の印象がどんどん薄くなってゆく
薄くさせたいが為に、さっきのことをなかったことにしたいが為に、演者が熱を発しているかのようなステージ
夏仕様の人魚姫が終わると、夜曲へ
夜曲の後、静まり返ったステージには大きめのTシャツとブルマとハイヒール姿の女がブツブツと文句を言いながら出てくる
歳の頃はきっと17、8歳
「なんで私だけ早番?誰も遊んでくれないしーシフト出るの、遅ーい!」と言い、繋がる待つ女
女が退屈そうに歩いていると、男に声をかけられている(男はいない)
「いま一人でいるけど暇?仕事はなにしてるの?」
そんな男の質問を女は心の底からせせら笑う
「えー職業ですか?風俗関係です」
女は、男が苦そうな顔をして去っていくのを嘲笑って見送ると、仕事帰りの女の仕事友達二人現れる
「最近シフト一緒になんないねー」
「これから遊びに行くー?」
なんて他愛もない会話を交わしながらも、女たちの目的は決まっている
「アフターファイブは、バブルっしょ?」
ジュリ扇を振り回し、いやらしい踊りを繰り出す女友達を横目に、女はダンスホールで踊ることを楽しんでいる。が、嫌な予感は拭えない。
曲が大団円となった瞬間再び鳴り響く夜曲
女は取り乱したように闇のなかへと逃げてゆく
女友達二人はさっきの踊りすら遊びではなく、サービスであったことを仄めかすようにあっけなく、同じく闇のなかへと去って行った
夜曲が終了し、暑苦しい蝉の鳴き声
茹だるような暑さの中、夏用学生服姿の先程の女が息を荒くして駆けてくる
女は取り乱し、息は整わない
歳の頃はきっと16、7歳
女は我慢しきれず嘔吐し、そして腹を押さえて立ち尽くす
先程の仕事姿をある生徒に知られ、バラされない約束の代わりに、女は交換条件を呑んだ
夏の暑さのなか、酸っぱくなった自分の口内と先程まで触られていた体温を思い出し、女は絶望する
告げ口
実は女にはもうひとつ交換条件を突き付けてくる人物がいた
それは教師
歌詞通り
そう、その通りに
女は腹を押さえて、跪く
嗚咽混じりに息も絶え絶え、その顔に少女の面影はもう微塵もなく、一人の女として迷っている
どうしよう、どうしようと繰り返し、女は涙ながらに答えを決めた
ごめんね
大丈夫堕ろすから
もういいよ
一番になれない過去にすらいれない
もう立てへんよ
ねえ、忘れるの?殺せるの?
決意を固めた女は、ふと何かに呼び止められたように階段の上を見る
赤子がいる!
慟哭しながらも歓喜の表情で階段を駆け上がった女は、赤子を拾いあげると、優しい表情になり、そして涙を流す
しかし女の表情は突然変わる
赤子を鷲掴みにし、階段から投げ捨てる
しかし、赤子には実態はなく(赤子はいない)虚しく白い一枚布が柔らかく宙を舞い、地面に落ちる
笑いながら闇のなかへ消えてゆく女
再び闇のなかから出てきた女は、オープニングで傘を差し赤子を置き去った女と同じ姿
しかし女の衣服は先程よりも格段にはだけて、目には生気がなく、ふらついた足取りで階段を降りてくる
女は自分が何者か徐々に思い出してゆく
再び出てきた女が唯一口にした言葉
海が燃えてる
許されたい
ひとつだけでいい、と繰り返す
明日あなたがいなくなっても私は生きて行くわと、いまの女には決意じみた嘘をつけば
始めなけりゃよかった?
生まれなけりゃよかったかな?
鉛色の海を見りゃ答えは
一目瞭然さ
と本音を吐露する
女は階段を登ってゆく
海が見たいと言い残し、闇のなかへと消えてゆこうと
ふと振り返ると女は客席があることに気付き、我に帰る
ありがとうございました
女の影は消え、私は薔薇園アヴになる
涙はただ涙で、歌は女王蜂の唄
さっきまでが総て芝居だったのか人生の断片だったのかはわからないけれど、私は私を取り戻し、祈りの唄を唄う
口ずさんでくれているひとがいて、涙を流している人がいて
お客さんが倒れる程に緊迫したり、かと言えばステージとフロア共々踊り狂ったりと、曲の繋ぎ目や現実の繋ぎ目、小芝居と演奏の繋ぎ目を総て曖昧にするのが、私なりの目標でした
それが遂行出来たようで、女王蜂五年目にして、曲の背景を見直すなんて少し早いかしら、なんて思いながらも、自分なり稚拙ですが、脚本を書いて演技風味ですが演じてみて、とても心地よかったです
大変やけど、またやりたいな
今回はうまく結ぶ言葉が今見つからないので、今回は一言で
好き勝手やって楽しんで頂けて嬉しかった!
ではまた
XOXO
【撮影:Ohagi、中野修也】