徒然ウィード
藪下

薮下晃正

1965年 福島県出身。
ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ A&Rルーム3チーフプロデューサーらしい。

TSUREZURE WEEDVOL.10

奇妙な符号。子供が生まれてからなんやかんやと部屋のレイアウトも子供用に変えてて、その途上でほったらかしにしたまんまの5.1チャン、サラウンドのスピーカーシステムをちゃんとセッティングしてみた。そしたら久々にDVDオーディオが聞きたくなって以前買ったトーキングヘッズ30周年記念の8枚組BOX『Talking HeadsDualdisc Bric』から『Remain in Light』を引っ張り出して聞いてみた!このBOX優れものでそれぞれのアルバム、片面が普通のCD、その裏がDVDの5.1サラウンドミックスになっている。しかもメンバーのジェリーハリスンの監修ということで、これがかなりサラウンドを駆使した縦横無限の素晴らしいミックスに仕上がっているのだ!このシステムを購入した時に面白がってピンク・フロイドからビヨークまで色々な5.1サラウンド・ミックスを聞いてみのだが、その中でもこのトーキングヘッズのミックスが個人的には群を抜いて一番強力だった。『Remain in Light』は発表当時、ブライアン・イーノのプロデュースでファンク色を強めたトーキングヘッズにとって黒人回帰的な問題作で賛否両論だったのを覚えている。今やリエディット・ヴァージョンも多数存在し、フロアーでも大人気の名盤!P-FUNKのメンバーなんかを迎えてのうねるような強烈なグルーヴ感は今聞いても全然色褪せてない。

”トーキングヘッズ

そんな折、丁度トム・ヨーク、ナイジェル・ゴッドリッチ、フリー、ジョーイ・ワロンカーらによる話題のスーパーバンド、ATOMS FOR PEACEのアルバム『Amok』国内限定盤を購入し、CDを聞きながらELE-KINGの野田(勉)さんによるライナーを読んでいて驚いた。何とトム・ヨークとナイジェル・ゴッドリッチはこの『Amok』を作る時に一番参考にしたのが上述の『Remain in Light』だったとい事実。なるほど、それでパーカッションで起用したのがデヴィッド・バーンやブライアン・イーノの作品にも参加しているマウロ・レフォスコだったというのは合点がいく。そしてこの作品を聞くと勿論、、フリー、ジョーイ・ワロンカーのプレイは言うまでもないが、このマウロ・レフォスコのパーカッションがメチャメチャ効果的!極限まで抑制された鋭利なサウンドに情熱的なグルーヴを与えるマウロ・レフォスコのプレイ、凄過ぎ!国内盤のBlu-specも音、勿論いいけど結局重量盤のアナログで聞いてます!

ATOMS FOR PEACE『Amok』

『murmur magazine』編集長であり妻のバンド仲間でもある服部(みれい)さんの処女詩集『だからもうはい、すきですという』(以前、『甘い、甘い、甘くて甘い』って詩集を頂いた記憶があったのだが、妻に聞いたらあれは私家本っていうか自費出版だった為、これが公式には処女作とのこと!)が送られてきて驚いた!それはウチの三歳の息子:夢太に捧げたという『新生児のブルース』なる一編が収録されていたからだ(笑)。『ラングストン・ヒューズの詩になぞらえて』という副題が添えてあったが、何と言うか木島始とか片桐ユズルあたりの往年の翻訳調の文体が新鮮な素敵な詩でした。しかし3歳にして美しい女性から詩を捧げられるなんて、ちょっとうらやましいぞ、夢太(笑)!かつて岡崎(京子)さんから教えてもらって以来、僕の愛読書である精神分析医R.D.レインの『好き?好き?大好き?』、その名訳をも彷彿させるような素敵な詩集です。微熱を帯びた44編の服部さんのことば、ことば、ことば。詩集?みたいな先入観なしにパラパラ捲ってみて欲しい!そうすればきっとあなたも詩が書きたくなります。何故なら服部さん曰く「いかなることばの連なりだってまちがいなく詩」なのだから。

”服部みれい詩集

最近、買ったレコード

先日、久しぶりにMUSICAANOSSA の中村くんのBar Musicに顔を出した。
そこで凄く感心したことがある。それはフリー・ソウルやMUSICAANOSSAで知られる名選曲家でもある中村くんが、最近のアーティストの音源を積極的にプレイしていたことだ。ともすれば年齢的にも新譜をチェックするのが面倒臭くて、どうしても過去の音源にばかり偏りがちな僕ではあるが、その時、Bar Musicに流れていたRhyeの『WOMAN』の素晴らしさに激しく反応してしまった!ふとしたきっかけで耳にしたこの新世代R&Bユニットの音源に触れ、現在進行形の新譜の中にも本当に魅力的なものがあることに改めて気付かされた。不況の音楽業界にあって、寧ろ今や誰も知らない所で実は最高の音楽が生まれ始めてているんですね。そして中村くんが往年の名盤を交えながら、敢てそれらの新譜をアナログ盤でプレイしていたことにも拍手を送りたい!しかもそれらのアナログが他の中古盤と一緒にBar Musicで買えるということにも驚きました、最高です!ちなみにその日、Bar Musicで僕が知ったのは前述のRhyeの『WOMAN』とInc.の『no world』の2枚。片やカナダ出身のマイク・ミロシュとデンマーク出身のロビン・ハンニバルによってロスで結成されたRhye。これ、ジャケも内容も素晴らしい!男なのに超SADE声。個人的には往年のスミス&マイティーのプロデュースによるCARLTONを彷彿させる、懐かしくも新しい今後のクロスオーヴァーなR&Bの潮流を感じさせる名盤。片や同じくロスのユニットでリリースはあの4ADからという異色のR&B兄弟ユニット、Inc.!ファレル・ウイリアムズやラファエル・サディークらのレコーディングにも参加してきたスタジオ・ミュージシャンとしての経歴もあるようだが、こちらも明らかにジェイムス・ブレイク以降のエレクトロニカな新しい手触りのR&Bサウンドが心地よいブライテスト・ホープ!そういえば先日の恵比寿リキッドルームでの公演も記憶に新しいANDY STOTT『Luxury Problems』も遂にアナログ発売されてましたね。
このあたりのR&Bというかテクノ、エレクトロニカ経由の新しいジェンダー・フリーな感触の歌物、個人的に今後の動向が超楽しみです!

つづく

Rhye『WOMAN』

Inc.『no world』

ANDY STOTT『Luxury Problems』

Thu.21.Mar.2013