徒然ウィード
藪下

薮下晃正

1965年 福島県出身。
ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ A&Rルーム3チーフプロデューサーらしい。

TSUREZURE WEEDVOL.07

世の中的にはメリクリって感じなのかな?今年も31日って言うか年明けまで仕事なので全く実感の無い年末を過ごしている。

最近の型破リな事と言えば、やはり『ミュージックステーションスーパーライブ2012』の凛として時雨のあの驚愕のパフォーマンスだろう。偶然、あそこで時雨見ちゃって人生変わる奴、絶対いると思う。ロックの神様がいるとしたら、あの日の時雨にはその神様が乗り移ってたような気がする。そんな凛として時雨が久々に何と12月27日武道館のステージに登場!ローリングストーンズの名曲をタイトルに冠した『DECEMBER’S CHILDREN』(http://www.decemberschildren.jp/)という名のこのイベントは凛として時雨のみならず、同バンドの3人によるそれぞれのソロプロジェクト、さらに9mm、ドレスコーズ、ムック etc豪華メンツによる素晴らしいイベント!まさに若者たちの神々が降臨する一期一会のイベント、要チェック、まだ間に合います!

”DVD

”『ROCKET

以前、フジファブリックの総くんに薦められた時には全く興味の無かったBlurの、今年のロンドン五輪開会記念コンサートのDVD『パークライヴ〈ライヴ・イン・ハイド・パーク〉2012』の輸入盤を購入。総くんゴメン、最近になってやっとデーモン・アルバーンの良さが解って来ました(笑)。正直、ブリットポップ自体にちょっとガキっぽいイメージ、先入観があってデーモン率いるBlurもこれまで聞かず終いだったのだ。その印象が何故今頃払拭出来たのかと言うと、それはデーモンとレッチリのフリー、フェラクティのドラムだったトニー・アレンによるスーパーバンド、ROCKET JUICE & THE MOONのアルバムがあまりにも素晴らしかったからだ。以前からデーモンのアフリカに対するアプローチには興味があった。前述のトニー・アレンと元クラッシュのポール・シムノンによるバンド、THE GOOD,THE BAD AND THE QUEENを結成したり、ロンドンのポートベローのレゲエとかカリプソ、サルサ等ワールドミュージックの名店として知られるレコード屋、オネストジョン(一時日本人の店員の子もいて僕もロンドンに行った時にはよくレゲエのビンテージな7インチ、そこで購入してました!)のオーナーとその名もオネストジョンというワールドミュージックを中心としたレーベルを始めたり、コンゴ共和国救済の為のアルバム、『キンシャサ・ワンツー』を現地のミュージシャンと共作したり、マリの盲目の夫婦デュオ、アマドゥム & マリアムのアルバムの中の1曲をプロデュースしたり、デーモンのそのアフリカに対する好奇心は留まる所を知らない。ゴリラズを始めデーモンってリスナー的好奇心と編集者的批評眼を同時に有したミュージシャンなんじゃないかな?そこに気付いたら俄然デーモン・ワークスに興味が湧いて来て改めてBlurを聞き直している今日この頃。8万人のロンドン子を集めたこのライヴ、面白かった!想像以上にバンドらしいバンドでした。個人的にはアルバムなら『パークライフ』、曲はこのライヴでも1曲目にやってた「ボーイズ&ガールズ」かな?何かロキシーミュージック的な気持ち悪くていい曲(笑)。でも何故かやっぱりDVD、最後まで見れなかったりする(爆笑)。

樋口毅宏『日本のセックス』文庫版

樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』文庫版

樋口毅宏『民宿雪国』

フジファブリックと言えば先日、異能のサンプリング系小説家、樋口毅宏『日本のセックス』が文庫化されてたので購入してみたら後書の後にCDで言う所のボーナストラック的にGREAT3の片寄(明人)くんと樋口さんの対談が付いてました。これ何のクレジットもなかったけど確かちょっと前にテレビブロスに載ってた同じ二人による対談の再録だと思う。この樋口さんという方は所謂タランティーノばりに引用、サンプリングを多用しながら物語を構築していくスタイルで、デビュー作の『さらば雑司ヶ谷』(この文庫版の後書もなんと我等が水道橋博士と町山智浩両氏!)でもストーリーと特に関係ない、登場人物の女の子が小沢健二の音楽について熱烈に語るシーンが唐突に挿入されたり、それこそミュージシャンみたいに巻末にはスペシャルサンクス的に映画、音楽、漫画、文学、ドキュメント、批評等影響を受けた様々なサンプリングソースに対して延々と謝辞を記していたりする。まあタランティーノがエクスプロイテーション、ブラックスプロイテーションの模倣だとしたらこの人は小池一夫とか梶原一騎みたいなエクストリームスプラッター劇画に近いですね、『カラテ地獄編』とか『子連れ狼』とかみたいな?エロとグロとバイオレンスが織り成すハードでカオスな物語、そして随所に散りばめられた元ネタ探しも楽しいまさに規格外の新しいエンタテイメント小説とでも言いましょうか(笑)。そんな樋口作品の魅力の一つにモテキばりに作品内で引用される氏が敬愛するロックの名曲の数々。『日本のセックス』ではまさにGREAT3の名曲が大々的に取り上げられている。この対談はそれが縁でGREAT3久々の復活に際して行なわれたテレビブロスの企画!樋口さんの自分が作品に引用したGREAT3を始め小沢健二、ストーンローゼスの活動再開に際しての強迫観念に近いコメントも最高(笑)。ちなみに対談の中で片寄くんのプロデュースに言及した流れでフジファブリックに触れている。

片寄 「質感が古くならない音楽が僕は好きだからね。(中略)フジファブリックの1stもたぶん何年経っても古くならないと思うし。」

樋口「最高ですよ。2000年代のベストの1枚です。」

樋口毅宏『日本のセックス』文庫版後書より抜粋

樋口さんもフジファブリック、好きみたい。

ちなみに樋口さんに『民宿雪国』という作品があるのですが最近のあの大量怪死事件をニュースで聞いた時、この作品を思い出しました。もはや現実がフィクションを凌駕しつつある今日この頃、来年はいいことがありますように!
(つづく)

Tue.25.Dec.2012