徒然ウィード
藪下

薮下晃正

1965年 福島県出身。
ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ A&Rルーム3チーフプロデューサーらしい。

TSUREZURE WEEDVOL.03

毎月、編集の高瀬(康行)くんが見本誌を送ってくれるHUGEをとても楽しみにしてる。今時本当に貴重な作り手の強い意思を、ライフスタイルを感じさせる素晴らしい雑誌だと思う。ファッションを軸に据えつつも、そこにインテリアやカルチャー、アート、その他、知的好奇心を刺激される強力な特集が毎号展開されている。今年だけでも7月号の1冊丸ごとアナログ・レコードの特集なんて、今時ちょっとありえないよねぇ(笑)?さらに8月号でも、多分、誰も知らないだろう往年のUKのガレージ系バンド、MILKSHAKESのメンバーであり、画家、アーティストとしても活躍する鬼才ビリー・チャイルディッシュで31ページだよぉ(笑)?頭、下がります。そして昨年の9月号のウォレス・バーマンの特集にはマジで驚愕した。アメリカのポップ・カルチャー史における裏のアンディ・ウォーホールみたいな人なんだけど、日本で彼を紹介するテキストってほとんど無かったから、故川勝正幸さんによる記事、メチャメチャ為になりました!このクオリティの高さ、往年の岡本(仁)さん編集長時代のマガジンハウスrelaxをも彷彿させる勢いです。ちなみにその岡本さんの「果てしのない本の話」をはじめレギュラー連載陣も粒ぞろい!以前、来日時に女王蜂も撮影してもらい、彼女自身のZINEでも紹介してくれたNYのカメラマンiOちゃん、野村訓市さん、若木信吾さん等々。個人的には巻末の「野口強のサク飯番長入魂記」の大ファンです!今月号を読んで、幡ヶ谷の龍口酒家が新宿高島屋の地下にイート・インとデリバリで出店してるのを知って、早速サク飯行っちゃいました(笑)。これスタイリストや編集者を中心に語り継がれてきた業界口コミ系なお店を紹介する、かなり斬新な視点のグルメガイドになっており、絶賛書籍化希望です、高瀬くん(笑)!ところで僕の編集アシスタント時代の思い出のサク飯と言えば、新宿の白龍のトマトタンメンとか川勝さんが大好きだった六本木の香妃園の鶏煮込みそば、さらに青山の山之内の冷やしネギそば、参宮橋の品華亭の鳥そばとか今思い出してみたら何故か中華そばばっかだね(笑)?
ちなみに高瀬くんとはゆらゆら帝国の取材で一緒にNYに行った仲でもあります。
 

HUGE2013年1月号


 
 
不況の煽りを受けて「冬の時代」と呼ばれるようになって久しい雑誌業界でありながら、上述のHUGEを始め、逆境にあってむしろクオリティの高い雑誌が増えてるような気がする。個人的に最近気になる雑誌を幾つか紹介をしてみようと思う。
まずはかつて『BARFOUT』編集者だった青野(利光)くんが編集する『Spectator』。何か植草甚一時代の『宝島』とか『ワンダーランド』、サイのマークの昌文社的な、ある種、ヒッピー・ティストのライフスタイルを紹介する雑誌。最近、アウトドア志向の特集が続いているけど、震災以降、レベルな精神に裏打ちされたより現実的な生き様を、敢てカジュアルに提案しているようにも思える。かなり不定期な1年に2冊みたいな発刊ペースではあるものの、店頭で目にすると、暫く会っていなかった親しい友人に会ったようで、存続していることに心からエールを送りたくなる。そんな素晴らしい雑誌です。
 

『Spectator』


 
数々の著作で知られる服部(みれい)さんが編集長を務めるエコ・カルチャー・マガジン『murmur magazine』も面白い。小さくてかわいいZINEとかフリー・ペーパーを思わせる判型はキュートだけどかつてのオリーブ少女の遺伝子を継承しながらそのスタイルは、『Spectator』とは違った意味でハードコア な感じがする(笑)。アーユルヴェーダ、オージャス、冷え取り健康法やホメオパシーなどホリスティックな代替医療をファッションに交えてカジュアルに紹介するエコ・カルチャー・マガジンとでも言おうか?一見取っ付きにくいこのジャンルにヘンな先入観も持たずに突撃し、「浄化しまくりっ!」とかまさに服部さん自身の視点で、言葉で自由にカジュアルに紹介しているのが斬新。好奇心の赴くままに、彼女が言うところの「新しい時代を生きるためのホリスティックな知恵」、所謂上述したような代替医療を始め、オーガニックコットン、ホ・オポノポノ、パーマカルチャー等様々な広義な意味でのエコ・カルチャーを自ら体験し、批評していくのが、女性を中心とした読者に絶大に支持されている理由なんじゃないかな?常識や世論に左右されない姿勢の根底にはSpectator同様、現代社会に対するカウンターカルチャーとしてのロックな強い意志を感じます!エコ男子代表としてカバンに忍ばせて通勤の途上、地下鉄で読んでます(笑)
 

『murmur magazine』


 
そんな現在の雑誌事情を考察するユニークな書籍を、以前CUTIE編集長の山下さんにもらった!上述した『Spectator』も『murmur magazine』も紹介されていた『再起動せよと雑誌はいう』(仲俣暁生著)というタイトルのものなんだけど、『relax』 は言うまでもなく『03』とか『studio voice』『VISAGE』『STARLOG日本版』etc既に廃刊になった雑誌のバックナンバーを後生大事に保存してる僕みたいな人間にとってはとても面白く読めた。この本の中に創刊時の『QUICK JAPAN』の編集長であり、僕の大好きな『証言構成「ポパイ」の時代~ある雑誌の奇妙な航海』の著者でもある赤田祐一さんと仲俣さんの対談が収録されているのだが、これを読んで初めて初期の『murmur magazine』と『Spectator』が同じアートディレクターだったということを知りました。そういえば赤田さんも同『Spectator』誌にて「証言構成『COM』 の時代 ある漫画雑誌の回想」というかなりディープな連載をやってて、個人的にはこれも書籍化が楽しみです!やはり面白いことをやっている人たちって何か繋がっていくものなんだなーと思いました。

『再起動せよと雑誌はいう』(仲俣暁生著)

他にも僕が偏愛する名著『ブラック・マシーン・ミュージック』の著者でもある野田(勉)さん編集長による復活後の『ele-king』やRAW LIFE浜田(淳)くんが編集長を務める『音盤時代』、スナックアーバンのママ、臼井さんから「薮下さんのこと、書いてあったよ!」と言われ九龍ジョーの連載をチェックしてから病みつきのプロレス・格闘技誌『KAMINOGE』(甲本ヒロトとか菊地成孔が表紙の格闘技誌なんてヤバくない?)などなど素敵な雑誌はまだまだ沢山あるのだ!その『KAMINOGE』の記事で、我らが玉ちゃんこと玉袋筋太郎さんがUFCの再上陸に触れて、むしろ地上波のテレビ中継が無くなってからの方が、総合格闘技全般に面白くなってきてる気がするみたいなことを言ってた。
僕も全く同感です!逆境にあってこそ『THE OUTSIDER』みたいに突然変異の面白い企画が生まれたりすることもある訳だし。雑誌や音楽もこんなクソみたいな状況にあってこそ、むしろザクザク面白いものが生まれてるような気がする今日この頃なんです!
 

『ele-king』


『音盤時代』


『KAMINOGE』

今週買ったCD
ディスクユニオン新宿PUNK MARKETにて購入。アメリカン・ハードコアのオリジネーター、生きる伝説!僕の愛するBad Brains、5年ぶりの新作『Into The Future』!原点回帰なハードコア色濃厚な素晴らしい内容!ちなみにご存じかとは思いつつBeastie Boysという名称はBad Brainsと頭文字が同じになるように考えられたというほど影響を与えたことでも知られる最高のバンドです。オリジナル・メンバーに戻った前作『Build A Nation』のプロデュースがBeastie BoysのMCAだったことを思うと感慨深いものがありますね…。R.I.P MCA

”Bad

(つづく)

#先週の間違い、誤植のお詫びをさせて頂きます!
僕の思い違いで、平成ガメラの1作目『ガメラ 大怪獣空中決戦』の舞台は福岡等九州が中心で、2作目『ガメラ2 レギオン 襲来』が仙台をはじめとする東北、東京を舞台にしたものでした。そして『サウダージ』の富田克也監督の「富」の字が「冨」になってました。富田さん、すいません、老眼で変換時に見落としてしまいました。さらにホントはアルバム『B級映画のように2』 のCDのジャケ写と、YouTubeでEVISBEATS feat.田我流『ゆれる』を並列で紹介しようとしていたのに、ジャケ写が抜け落ちてしまい、YouTubeの映像のキャプションが『B級映画のように2』になってしまいました。『ゆれる』はあくまでもEVISBEATSのアルバム『ひとつになるとき』の収録曲で、アルバム『B級映画のように2』には入っていません。しかし勿論、アルバム『B級映画のように2』が最高に素晴らしいアルバムであることは言うまでもありません!そしてEVISBEATSのアルバム『ひとつになるとき』も同様に傑作であることをここに付記します。今回は前回に続き、今度こそアルバム『B級映画のように2』収録曲『やべ〜勢いですげー盛り上がる』のPV、貼らせて頂きます!

 
以上3点、読者の皆さま、関係者の皆さま申し訳ございませんでした。
今後このようなことの無いよう気を付けます!

Wed.28.Nov.2012