Tue.10.Sep.2013

フラワーカンパニーズ×田我流

interview & text by 小野田 雄 photo by HayachiN

フラワーカンパニーズ

フラワーカンパニーズ

名古屋が生んだ“日本一のライブバンド”フラワーカンパニーズ。通称フラカン。
Vocal:鈴木圭介、Bass:グレートマエカワ、Guitar:竹安堅一、Drums:ミスター小西の4人組。
1989年、地元の同級生によって結成され、95年メジャーデビュー。
6枚のアルバム&12枚のシングルをリリース後、2001年メジャーを離れ、自らのレーベル「TRASH  RECORDS」を立ち上げインディーズで活動。
“自らライブを届けに行く事”をモットーに活動、大型フェスから小さなライブハウスまで日本全国津々浦々…
メンバー自ら機材車に乗り込みハンドルを握り、年間で100本を超える怒涛のライブを展開。
(機材車走行距離は年間軽く40000kmを超え、その距離は地球1周分に相当する。)
2008年11月、12枚目のアルバム「たましいによろしく」を7年8ヵ月振りにメジャーよりリリース。
以降、コンスタントにライブとリリースを重ね、2012年10月03日、通算14枚目となるアルバム「ハッピー エンド」をリリース。 2013年1月23日、シングル「ビューティフルドリーマー」(テレビ東京系ドラマ24第30弾特別企画「まほろ駅前番外地」オープニングテーマ曲)をリリース。そして、8月28日にリリースした「夜空の太陽」(読売テレビ・日本テレビ系全国ネットアニメ“宇宙兄弟”エンディングテーマ)が話題の中、10月23日にはニューアルバム『新・フラカン入門』のリリースが決定。
来年2014年4月23日で「メンバーチェンジ&活動休止一切なし」4人揃って結成25周年を迎える。

ホームページ
http://www.flowercompanyz.com

「人間の心境を歌う際にはかならず社会が関わってくるんだなって最近強く思うようになった」
(田我流)

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── 両者の接点といえば、田我流くんはアルバム『B級映画のように2』で、そして、フラカンも最新アルバムの『ハッピーエンド』収録の「エンドロール」で、震災や原発、その後の日常と真摯に向き合いましたよね。

圭介「震災以降、震災や原発については別ものとして考えて、歌にはしないっていう人もいるし、逆に正面からぶつかっていってる人もいる。まぁ、音楽やってる人から「原発あってもいいんじゃない?」っていう意見はほとんど聞かないんだけど(笑)」

田我流「そうかと思えば、震災や原発にフォーカスせず、普遍的なことを歌っている人の音楽をよくよく聴いてみても、本人は意図してないかもしれないけど、なんだかんだ社会的だなって思うんですよね。要するに社会があって、個人がいるわけだから、人間の心境を歌う際にはかならず社会が関わってくるんだなって最近強く思うようになって。ロックのラヴソングを聴いても、「今の社会がこうだから、こういう恋愛観が歌われているんだな」って思ったりするし、フラカンの音楽を聴いてても、「金がない」とか「夢がない」、「女もいない」とか出てくるじゃないですか。そういう表現を辿っていけば、今の社会に繋がっていくし、音楽をやること自体、表現者が意図しなくても、今の社会は自然に反映されるものなんだなって。俺自身は直接的に言っちゃうんですけど、最近は言わなくてもいいんじゃないかなって思うようになったし、俺が意見を言うのも、誰かが考えた意見を否定したいわけじゃないんですよ。それに震災や原発について歌わないということは、その人のなかで歌いたくないくらい、それがショッキングだったり、認められないからかもしれないですしね」

圭介「俺もそう思う。社会ということもそうだし、時代性ということも、例えば、「スマホがどうした~」ってことを歌詞に入れれば、分かりやすく今の時代性は出るけど、どんな人であっても完全に社会を断ち切ることは出来ないわけだから、自分が考えていることを歌にするだけで、その時代のムードはおのずと伝わると思うし、逆に言えば、時代性を出さずに歌うことは出来ないのかなって」

田我流「だから、歌うこととその反応について、臆病になることはないんじゃないかなって思うんですよね」

マエカワ「うん、それはそうだね」

圭介「その一方で、「曲のなかで時代性を色濃く出し過ぎると、その時代が過ぎた後で色褪せてしまうから、もっと普遍的なものを作ろう」っていう考え方もあると思うんだけど、歌を長持ちさせようっていう発想自体がおこがましいというか。逆に田我流くんは70年安保の時代とリンクした加川良「教訓Ⅰ」をカヴァーしてるじゃない?昔、俺も加川良は好きで聴いてたし、カヴァーもしてたから、「加川良がなんでこんなところで!」ってスゴいびっくりしたんだよね」

田我流「安保の時代のフォーク・シンガーということは、つまり、加川良さんは先輩ってことだなって思ったし、アルバムを作ってる途中にあの曲を聴いて、「これはカヴァーしよう!」って、ぴんと閃いたんですよね。あの時代はマッチョというか、オラオラな時期だったって聞いているんですけど、そういう流れに抗って、「教訓Ⅰ」を歌うこと自体、スゴいことだなって思ったし、歌詞が理路整然としてて、いつの時代にも聴けるじゃんって思ったんですよ」

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── 圭介くんは加川良を出してたレーベル、URCのCD再発でコメントを寄せていましたもんね。

圭介「そう、そうなんです」

マエカワ「だから、田我流くんが「教訓Ⅰ」をカヴァーしてるっていう話をうちのスタッフから聞いて、つながるポイントがあるんだなって」

── 例えば、ボブ・ディランのリズミックな歌詞はラップの元祖だっていう言い方をする人もいるじゃないですか。そういうフォークの言葉とラップの言葉のリンクに関して、どんなことを思います?

田我流「自分が突き詰めたなかでラップには2つルーツがあって。一つはアメリカのソウルやファンクが進化していって、最終的に語り口調から口喧嘩の延長で生まれたラップ。それからもう一つは日本にあって、例えば、岡林信康さんの「ホビット」(1973年のアルバム『金色のライオン』収録)は……あれもラップだと思うんですよ」

圭介「うん、あれはラップだよね!」

田我流「俺がラップに入った一番最初はアメリカのラップでしたけど、年を重ねて、自分のルーツを考えるようになった時、自分が生きてきた土地にも先輩はいたんだなって捉えられるようになったんですよ」

── 歌の歌詞を書く圭介くんから見て、田我流くんのリリックはどう思われますか?

圭介「いや、もう、相当スゴい。まず、ボキャブラリーがハンバじゃないんですよ。そうじゃなきゃ、あれだけの言葉は出てこないし、しかもね、その言葉が薄くない。それから田我流くんが『B級映画のように2』に寄せた序文も一個の小説のようになっているし、仮にロックだったら、最初の一行だけで一曲出来るくらい濃いものが詰まっているというか、カルピスが原液のまま差し出されているような感じ(笑)。だから、別の何かをしながら、BGMとしては聴けないよね」

田我流

田我流

(でんがりゅう / stillichimiya)山梨県一宮町をベースに活動するラップ・アーティスト。

高校時代にマイクを握り始め、卒業後ニューヨーク州へ留学。様々な音楽や文化に触れアーティストの感性を広げる。

帰国後、一宮町出身の幼馴染みとラップ・グループ、stillichimiya(スティルイチミヤ)を結成し、アルバム2枚、ミックス・アルバム1枚を発 表した。2008年にはファースト・ソロ・アルバム「作品集~JUST」を発表。疲弊した地方経済や田舎特有の問題を題材にした曲を多く収録し共感を集め る。また、県内外で精力的にライブを行い、表現力に磨きをかけてきた。

2011年に公開された富田克也監督映画「サウダーヂ」では、映画初出演ながら主演を務める。「サウダーヂ」がロカルノ国際映画祭メインコンペティションで批評家賞を受賞し、国内外の映画際で立て続けに受賞。映画の評価と共に田我流の表現にも注目が高まる。

2012年4月、セカンド・アルバム「B級映画のように2」を発表。自己の内面の闇を徹底的に掘り下げることによって、国家の抱える問題をえぐり出した。 ストレートな歌詞と妥協なきサウンドが同世代を中心に圧倒的な支持を得て、震災後の2012年を象徴するアルバムとして高い評価を受けた。

2012年の夏には初の全国ツアー「B級TOUR -日本編-」を敢行。初日の山梨公演ではTHA BLUE HERBが自ら前座を役を買って出てくれ、全国ツアーに勢いを与えてくれた。全17公演のファイナルは渋谷WWWで開催され、異常なまでの熱気と感動に包まれた。

これまでにTHA BLUE HERBを始め、七尾旅人、曽我部恵一、OGRE YOU ASSHOLE、eastern youth、ceroなどと対バンを行っている。2013年6月12日に全国ツアーのドキュメンタリーDVD「B級TOUR -日本編-」を発表。

ホームページ
http://www.maryjoy.net/artists/dengaryu.html