2000年、志村正彦(Vo/G)を中心に結成、2004年メジャーデビュー。
「銀河」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、叙情性と普遍性と変態性が見事に一体化した独特の魅力で評価を得る。
2009年末、志村が急逝。
2010年夏、富士急ハイランド コニファーフォレストにて15組のゲストアーティストを迎えたライブイベント「フジファブリック presents フジフジ富士Q」開催。遺された新曲をメンバー3人が完成させる形でリリースしたアルバム『MUSIC』より、「夜明けのBEAT」が「モテキ」TVドラマ版(2010年)主題歌、映画版(2011年)オープニングテーマとして連続起用。
2011年夏、山内総一郎(Vo/G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人体制にて新たに始動、アルバム『STAR』を9月リリース。
2012年5月、新体制初のシングル「徒然モノクローム/流線形」リリース。
その後も「Light Flight」、「Small World」とシングルリリースを積み重ね、集大成となる最新アルバム『VOYAGER』を2013年3月リリース。初の全国ホールツアーも成功を収める。
http://www.fujifabric.com/
──アルバム『VOYAGER』のリリースから7ヶ月。その間に行ったホール・ツアーを経て、どんな心境で新作の制作に臨みましたか?
山内「今年3月にリリースしたアルバム『VOYAGER』の曲がその後のツアーでものすごくいい反応をもらって。そこで改めて、フジファブリックにおけるライヴが自分たちの活動を支えてくれるものなんだということを強く実感したんですね。そして、自分たちのなかでは『STAR』、『VOYAGER』という2枚のアルバムを通じて、3人体勢での作品を打ち出すことが出来たという達成感もあったんです」
加藤「やりきった感は確かにあったよね」
山内「だから、5月に『VOYAGER』ツアーが終わって、次にどんな作品を作ろうかなと考えた時、「新しいステップとして、ライヴで一緒に盛り上がったり、踊れるような曲を作りたい」と素直に思えたんです。ただ、”踊れる曲”というのは人それぞれなので、フジファブリックらしいダンス・ミューッジックを作り上げること。それが今回のEPのテーマですね」
──2000年代以降の世界的な流れとして、多くのバンドがニューウェイヴやEDMといったダンス・ミュージックに触発された作品をリリースしているだけに、ダンス・ミュージックの枠組みでフジファブリックらしさをいかに表現するのか。
山内「そうなんですよね。だからこそ、他のバンドと一緒のことをやっても面白くないなという気持ちがまずありましたし、ダンス・ミュージックというフィルター越しにフジファブリックらしさをいかに打ち出すかという点にこの作品の存在意義があるな、と。そして、似たような曲を排除しながら作品を作った過去2作は、その多彩なヴァリエーションにフジファブリックらしさがあったと思うんですけど、今回はまずダンス・ミュージックという一つの大きな枠組みがドーンとあって、そのなかでいかにフジファブリックらしさを出すか、3人の個性を出すかというトライアルは自分たちにとって新鮮でもありました」
──今回、3人がそれぞれ楽曲を持ち寄っていますけど、オルナタティヴ・マナーを織りこんだ1曲目の「フラッシュダンス」は金澤くん作です。
金澤「この曲では、サビありきではなく、ダンス・ミュージックがそうであるように、キャッチーな単音のメイン・リフの繰り返しで最後まで行っちゃうような曲が作りたかったんです。そのためには強度の高いメイン・リフが必要で、この曲のメイン・リフはシンセを5重に重ねました」
──あのリフ、あの音色は1回聴いただけで頭に焼き付くほどに印象的ですもんね。
金澤「それから、どの曲にも当てはまるんですけど、ダンス・ミュージックは音と音の隙間があったほうが踊れるので、その隙間を埋めてしまわないように、キーボードを弾きすぎないように心がけつつ、常に新しいものを提示したいので、例えば、焼き鳥とワインを組み合わせるみたいに(笑)、色んな種類のキーボードを組み合わせることで、新しいテイストを生みだしたかったんです」
山内「そして、ダイちゃんのメロディはビートと一体となった時、より感情を刺激するものになるんだなという新たな発見もありつつ……」
金澤「そう、ダンス・ミュージックでありつつ泣ける曲にしたかったんですよ」
山内「あと、この曲では『VOYAGER』ツアーでもサポート・ギターをお願いした名越(由貴夫)さんにギターを入れてもらったんですけど、自分たち以外のギターを入れたのはこの曲が初めてなんですよね。名越さんはオルタナ番長というか、僕にとってギター・ヒーローでもあるし、なにより「フラッシュダンス」には名越さんのサウンドが必要だったんです」
──空間を埋める名越さんのギター・ノイズは名人芸というか、鳴りが絶品ですもんね。
山内「そう、同じギタリストとして、名越さんのギターが混沌とした曲の世界をより広げてくれることは目に見えて分かっていたし、名越さんがギターを録り終えた瞬間、ダイちゃんは大声で「俺、オルタナ好き!」って言ってましたからね(笑)」