Wed.2.Oct.2013

フジファブリック インタビュー

interview & text by 小野田 雄

フジファブリック

フジファブリック

2000年、志村正彦(Vo/G)を中心に結成、2004年メジャーデビュー。
「銀河」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、叙情性と普遍性と変態性が見事に一体化した独特の魅力で評価を得る。
2009年末、志村が急逝。
2010年夏、富士急ハイランド コニファーフォレストにて15組のゲストアーティストを迎えたライブイベント「フジファブリック presents フジフジ富士Q」開催。遺された新曲をメンバー3人が完成させる形でリリースしたアルバム『MUSIC』より、「夜明けのBEAT」が「モテキ」TVドラマ版(2010年)主題歌、映画版(2011年)オープニングテーマとして連続起用。
2011年夏、山内総一郎(Vo/G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人体制にて新たに始動、アルバム『STAR』を9月リリース。
2012年5月、新体制初のシングル「徒然モノクローム/流線形」リリース。
その後も「Light Flight」、「Small World」とシングルリリースを積み重ね、集大成となる最新アルバム『VOYAGER』を2013年3月リリース。初の全国ホールツアーも成功を収める。

http://www.fujifabric.com/

fuji2

──そして、楽曲と同じく、切ない感情が疾走する様を綴った歌詞は加藤さん作。

加藤「3人とも車は持ってないんですけど、この曲はドライヴに合いそうなビート感だったので、歌詞における車の設定だったり、車のなかで過去の記憶がフラッシュバックする様だったり、夜の車窓を流れる街灯がフラッシュするイメージが思い浮かんだんです」

山内「でも、フラッシュやフラッシュバックだと、タイトルとしてはどうもしっくりこなくて、ダンスつながりということで同名映画から曲タイトルを付けました」

加藤「そのうえで、この曲の歌詞では『VOYAGER』までの流れからもう一歩深いところに踏み込んだ人間関係の難しさや男女の悲哀を書きたかったんです。しかも、ダンス・ミュージックというのは高揚感が生まれる音楽じゃないですか。だから、そういう曲にエモーショナルな歌詞が乗ることで、より力強く聞こえたりもするし、ダイちゃんが意図した通り、泣きながら踊れる曲になってるんじゃないかな、と」

──続く2曲目の「バタアシParty Night」と3曲目の「Mystery Tour」は山内くん作。この2曲では共同プロデュースに電気グルーヴほかを手掛ける渡部高士さんを迎えていますね。

山内「「フラッシュダンス」と4曲目の「しかたがないね」は『STAR』や『VOYAGER』同様、エンジニアは高山(徹)さんにお願いしたんですけど、高山さんはバンド・メンバーに近い存在で、フジファブリックに対する愛情を感じるし、安心して一緒に音楽を作れる人なんですよね。そういう2曲があるからこそ、「バタアシParty Night」と「Mystery Tour」では新たな挑戦に踏み出してみよう、と。この2曲では、これまでのように曲に延々と手を加えていく作り方ではなく、その場で曲を作りながら完成形を構築して、出来たものをそのまま作品としてリリースしたかったんです。その点、渡部高士さんはダンス・ミュージックのプロダクションに秀でているし、ご自宅がスタジオになっているので、自分たちがやってみたかったこととも合致するし、フジファブリッックの新機軸として渡部さんにお願いしようということになったんです」

──渡部さんは過去に電気グルーヴや石野卓球さんの作品を手掛けてきたプロデューサーであり、エンジニアでもある方ですよね。

山内「そうですね。ただ、まぁ、僕らが電気グルーヴのような音楽をやりたくて、渡部さんにお願いしたわけではなく、過去手掛けてきた作品で発揮されている面白い発想を今回のレコーディングで活かしてもらいたかったんですよ」

金澤「実際、渡部さんは僕らが普段使わないような機材を感覚的に、そして、巧みに操って、思ったことがすぐに形になるんです」

山内「しかも、踊りながら作業してましたからね(笑)。あと、ダンス・ミュージックを作る人って、4小節のループの細部を延々と詰めながら作業することが多いんですけど、渡部さんも一端スイッチが入ると作業が止まらないんですよ(笑)。まぁ、それは高山さんにも当てはまることなんですけど、録音した素材をミックスする作業にその人の色が出るタイプのエンジニアさんなので、今回もサポートでドラムを叩いてもらったBOBOさん含め、フジファブリックにとっては第4のメンバー的な存在ですよね」

──そのうえで2曲目の「バタアシParty Night」は、ファンクと呼ぶにはあまりにアグレッシヴな、はみ出すような勢いがありますね。

山内「そう、この曲ではファンクがやりたかったんですけど、結果的には一言でファンクとは言い切れないフジファブリックらしい曲になったと思います。そういう曲にどんな歌詞を乗せるのか。今回はどの曲もそうなんですけど、強い思いを込めるしかないなって。歌詞のなかでは「殴られたら殴り返せ」って歌っているんですけど、それは自分にも向けた憤りや悔しさでもあって、そういう心の葛藤を書き綴りました。そして、この曲で何が伝えたかったかというと、「人生における最大の敵は”めんどくさい”という気持ち」だということ。これは中学生の時に読んで以来、ずっと頭の片隅にある古谷実さんの漫画『グリーンヒル』がヒントになっているんですけど、たとえ、そこに困難があったとしても、面倒臭がらず、あがいてやっていきたいという意味で「パタアシ」という言葉を使いました。そして、歌詞のなかで使っている「バタアシ」や「地団駄STEP」という言葉はダンス・ミュージックという今回の作品テーマともつながっていて、つまり、人生においても、ライヴ会場であっても、自由に踊ろうよということ」

──不格好でも、まずは踊ってみよう、と。

山内「そう。テンポが速いし、踊りづらいかもしれないけど、ジタバタ地団駄踏んでいる歌詞の世界観を考えたら、こういう切迫感のあるアレンジ、切迫したなかでも大声で叫べるようなコーラス・アレンジが正解だなって思ったんです。そして、こういう切迫した曲のなかでこそ、自分の芯の部分が見えてくるような、そんな気がしますね」

インタビュアー<br />小野田 雄

インタビュアー
小野田 雄