SHOW LIVE REPORT

2012.10.12(金)

女王蜂 第二回全国ツアー「九蛇行進」最終公演・東京@新木場STUDIO COAST

Photo by 岩根 愛

 今年の5月、メジャー第2作目となる「蛇姫様」をリリース直後に伝えられた衝撃的な事実、ギター:ギギちゃんの利き腕故障によりバンドから離脱。オフィシャルHPにはアヴちゃんから、これまでの4人体制の女王蜂を応援してくれたファンへの謝辞、そして「あたし達は増殖する。そして進化を遂げる。もう戻れないから」という強いメッセージと共に今後不特定多数の演者を加えた編成で活動を継続することを宣言。これを受けて6月1日の東京・SHIBUYA-AXでの単独公演「仮面の宴 第二夜」より、女王蜂の新たなる幕が、ここに切って落とされたのである。
 忘れられない悲しい出来事を乗り越え、メンバー3人にギター、キーボードを奏でる謎の演者2名を増殖し、寧ろさらに妖艶に、そしてパワフルに進化、深化を遂げた女王蜂!待望の第二回全国ツアー、題して「九蛇行進」! 9月1日の仙台を皮切りに、新潟、札幌、大阪、広島、福岡、岡山、名古屋、と初めて訪れる地を含む八カ所を経て、遂に九匹目の蛇、本日、東京・新木場STUDIO COASTにてファイナルを迎えた。
 ドレスコードが無かったにも関わらず、客席にはメンバーのコスプレの嵐となり異常な盛り上がりを見せたセミファイナル名古屋公演の噂に、いやが上にも期待が高まる中、会場はある種の緊張感に包まれる。BGMは甘美なラフ・マニノフのピアノコンチェルトの旋律。
 開演時間を10分ほど過ぎたあたり、突然、照明は暗転し暗闇の中、湧き上がる歓声と共にメンバーがステージに登場。ルリちゃん、やしちゃん、そして謎の2名の演者がそれぞれに花柄をあしらったピンクや白を基調にした華やかな統一感のある衣装に包まれている。ステージ上手、ピンスポットに照らされるのは、黒のロングのヘアピース、金色に鈍く輝く衣装を身に纏ったアヴちゃん。おもむろなピアノによる弾き語りから「歌姫」でコンサートはスタート!弾き語りパートから激しいシャウトと共にバンドの轟音が会場を支配する!「こんなもんかい東京!」アヴちゃんのMCに煽られ、開始早々「Ψ」「火の鳥」という矢継ぎ早のダンスチューン攻撃に、フロアーは大きく揺れ始める!
 背中を向けたアヴちゃん、振り向きざまの「D!I!S!C!O!」のカウントに早くも会場の盛り上がりは最高潮!あの映画「モテキ」で知られるキラー・チューン「デスコ」で羽扇子を振りながら踊り歌うアヴちゃん!「ダイ・フォー・ディスコ・リーミックス!」のシャウトと共に演奏はダンス仕様のリミックス・パートへ変貌!今回のツアーの目玉でもある、CDでは聞けない、まさにライヴのみのエクスクルーシヴなアレンジが観客の狂乱のダンスをさらに加速させる。煌びやかなシンセが印象的な「80年代」で東洋最大と言われる巨大なミラーボールが回り出し、フロアーはディスコに変わる!そして、あのお馴染の女王蜂流ガレージナンバーとでも言うべき「鬼百合」も決して例外ではない。ピンク色のキュートなミニに着替えたアヴちゃんの、演奏のブレイクを経た、「女王蜂ってこんな深い音楽も出来るんだね!見直した!(笑)ってアレンジでやります!」というMCを合図にアレンジは突如、ファンキーなギターのカッティング、うねるベースラインも印象的な、岡村ちゃんもJBもびっくりの超ファンク・アレンジへ!「GET FUNKY!」「女王蜂はいつでも全ての音楽のジャンルをはき違えてたいのー!」とアヴちゃんがシャウト!変幻自在な女王蜂の、固定観念に縛られない音楽性をそうやってアピールすると、客席から肯定の拍手&声援が湧き上がる。

 中盤、「この曲でも踊れるやんな?」のMCで「鏡」「告げ口」という女王蜂の真骨頂とでも言うべきダークチューンが会場のムードを一変させる。「告げ口」では「かごめかごめ」のフレーズをシンセでリミックスした新しいアレンジが、より鮮烈な印象を残す。「口裂け女」の耳をつんざくノイズの後に訪れる静寂。暗闇の中、椅子に腰かけたアヴちゃんが呟く。「大事な曲をやります…」のMCと共に披露された「無題」に会場の空気がピンッと張り詰めるのが解る。神秘的な照明に照らされてエモーショナルに紡がれていく堕胎をめぐる愛の物語。徐々に熱を帯びて行く演奏に、観客の視線は釘付けにされる。まるで何かが憑依したような鬼気迫るアヴちゃんのパフォーマンスに、会場は拍手の渦に包まれる。ギターのアルペジオに誘われ「燃える海」が流れ出す。優しい表情で朗々と歌い上げるアヴちゃんの一挙手一投足に魂を鷲掴みにされ、放心状態のオーディエンス!会場は感動の嵐に包まれる。

 「最後の曲です。今日はありがとう!」。最新作『蛇姫様』からあまりライヴでやらない「イミテヰション」をドロップ!軽快でストレンジなポストロック・サウンドに誘われ、会場は再び興奮の坩堝と化す!鳴り止まぬ拍手に包まれ本編は終了した。
 アンコール、歓声と共にメンバー再登場。アヴちゃんがはにかみながら心情を吐露。「弱ってた時に、(ライヴが)ちょっと怖くなって…でも待ってる子がおるから絶対やりたいって思って!でももう怖くなくなった!みんなのおかげです!ありがとう!」。客席から溢れだす温かい拍手がメンバーを包み込む。世界一の笑顔を湛えた女王蜂の演奏が再び始まる。「90年代」の演奏に観客が一斉に両手を高く上げてフロアーが揺れる。アヴちゃんがビヨンセばりのイナバウアーを披露。続く「ストロベリヰ」のイントロが流れた瞬間、会場は異常なテンションに支配される!アヴちゃん、ルリちゃんのコーラスは溶け合い、やしちゃんの地を這うようなベースがまさに大蛇のように客席を畝るグルーヴを生みだす。
 続いてキュートな女王蜂Tシャツ、ストキッングを身に纏ったメンバーからこのツアー恒例の物販紹介コーナー!「フェスで嫌やな思いした人!厄除けの意味を込めて作りました(笑)!」。背中にアヴちゃの強力な眼力がプリントされた厄除け大蛇Tシャツ、鱗ストッキング、美脚繚乱スカーフ等アヴちゃんデザインによる個性的なアイテムの数々に会場は笑顔に包まれる。

「4人の女王蜂が好きだったみんな、ごめんなー。でも今回始めてバンドになった気がして…。
もっと女王蜂は変わって行きます!!」。ギギちゃんの脱退を経てアヴちゃんの真摯なMCに会場は温かい拍手に包まれる。
 「次はコール&レスポンスの曲です!」。アヴちゃんがやしちゃんにうなだれるように寄り添い口から洩れる溜息と共にキュートなヴォイスで口ずさむのは「レザー」。ブレイクでドラム椅子の上に高々と立ちあがりポージングするルリちゃん!観客とメンバーの「ヤンヤンヤヤン ヤンヤンヤヤン」のコール&レスポンス合戦!
 「最後は蛇だけに鱗まみれの女の子の歌です!」のMCで贈るのは「人魚姫」。この曲にも、ここでしか聞けないスパイシーなアレンジをトッピング!途中から情熱的なラテンのフレイヴァーを加味し、さらにそこへオリエンタルなチャイナ・メロディーが絡まり、聞いたこともないエキゾチックなグルーヴに客席の温度が天井知らずに上昇し続ける中、メンバーはステージを後にする。

 客電が灯り、BGMが流れ始めているというのに鳴り止まないアンコールの拍手。
高揚した表情のメンバーがまたしても登場!「欲しがりね(笑)!欲しがり嫌いじゃないです!」
奇跡のダブル・アンコール!最後の最後は「バブル」。80’sフレイヴァー溢れるシンセのオーケストラヒットの響き!この時、新木場STUDIO COASTはまるでバブル時代のディスコの如き熱狂に支配され、興奮したオーデイエンスは高く掲げた両手を揺らし続ける。「スペシャルなジュリ扇です!」孔雀の羽根のようにヴィヴィッドで巨大な羽扇子を振りながら、疲れを物ともせず、激しいダンス&ヘッドバンギングを繰り返すアヴちゃん!これまで一度も目にしたことのない異次元空間が新木場STUDIO COASTに誕生した奇跡の一夜を、満場のオーディエンスはしかと心のフィルムに焼き付けたに違いない。凄さまじいエナジーを放電しまくり、この世のものとは思えない磁場を幻出させる八岐大蛇ならぬ「九蛇行進」は空高く舞い上がり、女王蜂待望の第二回全国ツァー最終公演は幕を閉じたのである。
 終演後、会場には、気が付けば山口百恵の、あの星空を巡る名曲「乙女座宮」が流れていた。